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Monday, June 9, 2014


ピノチェトのアジェンデへの降伏勧告の虚偽判明とピノチェト裁判の意義2014/4/10
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 本書は、ピノチェト及び戦後米帝国主義による、’’民主化’’や’’自由化’’や’’経済成長’’をレトリックとした他国の属国化政策がチリと世界史にもたらした影響に関し、三つの核心的な論点を提示している。

 一つは、チリの国内の世論ではピノチェトが9月11日のクーデター時にアジェンデに国外退去を勧告していたが、それに応じていればアジェンデはまだチリの為に活躍できただろうという幻想があったが、それは本書でもピノチェトの欺瞞であることが指摘されている。当日、ピノチェトは部下であるカルバルル提督に、アジェンデ政権への国外退去勧告に言及してこう言った。「彼を国外に連れだす話はして構わない。......しかし飛行機は墜落するんだよ。友よ。飛行中にな。」(P.118)

 次に、イギリス法官貴族達がピノチェトの免責特権を剥奪したことは、各国の特権階級が国際裁判で裁かれうる道を切り開いた革新的な先例であるということ。世界人権宣言の理想の実現は、免責特権なき国際司法体制の確立である。

 最後に、CIAに暗殺されたアジェンデ支持のカルロス・プラッツ将軍は、反新自由主義の民主思想を冷戦思考に囚われずに主張した。それは、健全に機能する社会福祉を国家安全保障の観点から捉えた点が新自由主義とは対照的である。「一つの国家は、真の主権を持ち、国民が飢えず、家があり、健康で、自由で、教育を受けている時安全なのだ。」(P.165)

本書は、ドキュメンタリー等で大抵遺漏しているチリのCIA秘密工作に関する詳細な情報に富んでいる。チリのCIA秘密作戦のみならず、ピノチェト裁判や米帝国主義研究にとっても必読の書となっている。
対米従属批判論者の中西良太さんのアマゾンレビューより    

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