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Monday, June 9, 2014


佐藤さんによる参考になる書評集2014/5/9
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本書は、基本的に読書指南本であるが、全編で57節ある書評はそのまま単なる推薦図書ではなく、佐藤さんの思想的見解の表明の場となっている。目玉は、文庫版特別講義録であり、このAmazonのネット書店でのレビュー数も選読の決め手にまずなるという。(P.4)そして、紀伊国屋などのリアル書店でその目をつけた本の周辺もチェックすることで視野が広がり、思わぬ発見もあるので、両者は相互補完的であると位置づけられる。読書は、佐藤さんのような愛国的なインテリ層の指摘するように間接知を補うためのものである。本書での佐藤さんの読書論の中で、ポストモダニズムの虚構が批判されている箇所が特に印象に残った。「1980年から2010年までの30年間は、不毛な読書論の時代でした。例えば、歴史なら、通史はいらないと言われてきました。けれどもやはり、『大きな物語』がなければ歴史は理解できない。物語を回復しなければならないのです。人は物語を求める動物です。小さな差異にこだわり、精緻な、実証的な物を見ていくだけだとどうなるか。質の悪い、とんでもない『大きな物語』が出てきた時に、それに知らないうちに乗っ取られてしまうのです。」(PP.9-10)佐藤さんも反対するネオリベラリズムとポストモダニズムは時を同じくして発展してきた。どちらも、1960年代に勃興し,1980年代から本格的に発展してきている。機能主義を軽視し、有機的秩序の不毛な破壊者たる後者は、前者の上部構造への反映とみて間違いない。

ここでは、最も感激した箇所を紹介するのに止める。それは、第13節の「『婚活』を考えるー新自由主義が若者を食い物にしている」において、日本の教育をシュウカツ教育に堕落させ不毛にしている就活がビジネスであり、さらに婚活もビジネス化しているという本質を佐藤さんが指摘されている箇所である。私は、さらに、これに終活も加えたい。今や高齢者の方達も遺影や墓所購入の終活ビジネスに社会的に再編されてしまっている。シュウカツ、コンカツ、そして人生の終わりに関わるシューカツの三つが日本人の若者から高齢者までの人生活動を操作し、超格差を固定し人々を煽動し、ビジネス化しているのである。そして、これらを生み出しているのが新自由主義という、CIAが率先して世界中で蔓延させている悪疫である。

私は次の佐藤さんの至言が特に感動した。「婚活の技法よりも、他人を思いやる心を養うことのほうがずっとパートナーをみつけるのに役立つと思う。」 (P.98)これは、就活や終活にもそのまま言えることである。つまり、新自由主義は、全てを逆立ちさせ、本末転倒にさせてしまうのである。そこに商機を見いだすのは誤りである。本質を見失った無分別なビジネス化は、人間性を破壊してしまうだけである。

本書は全日本国民必読の書です。

対米従属批判論者の中西良太さんのアマゾンレビューより

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