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Monday, January 19, 2015


神学的思考から真の信仰とは何かを学ぶ2015/1/18
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佐藤さんは、結論から言うとキリスト教の本質を救済宗教であることと断言しています。

佐藤さん:…イエス・キリストが救世主であることを受け入れることによって、我々一人一人が救われたと確信できる事がキリスト教の本質… (P.3)

本書で、私は非キリスト教徒として初めて真の信仰の在処を理解できました。ここでは、幾つかのキーワードがあります。まずは、救済宗教としてのキリスト教、類比の思考、関係の類比、創造の秩序の神学です。これらを把握することで、本書の根本思想が明確になります。そして、それは佐藤さんの作家としての守備範囲である、日本外交、ロシア、民族問題、インテリジェンス、国内政局、沖縄問題、哲学、思想、勉強法などの全ジャンル(類型)を貫く思考法であり且つ、根本思想です。方法とは、本質の問題と言われる所以です。

私は、有神論を尊重しますが、信仰とは何かを理解するのに、ここでは形而上学と信仰、それに対して神学的思考は実は峻別されるべきものだと気づきました。また、神学的思考、信仰/宗教とは神に対してどう人間が答えるかという主観的、主体的問題の観点はもう形而上学の領域なので、カント哲学の段階よりも退歩する訳にはいきませんので、幾つかの最重要部のみについて記述します。

一つは、キリスト教の原罪論は、人間的な民主制度どころか、そもそも人間的な一切の創造物に原罪があるという根源性の問題があり、根源において民主制度すら否定しているということです。ここに、バルトの危惧したキリスト教のナチ化、ドイツ化にみる同宗教の土着化問題があります。これを支えるのが、創造の秩序の神学です。被造物の類比による、神の秩序/意志を読み解く、現実肯定的な思想は、人間の創造物の一切を神の創造と見なす危険思想を生みました。佐藤さんは、この点を危惧し、類比の思考の薦めとは対照的に、以下の如く、プロテスタント神学の思考及び使命を再定義されています。

佐藤さん:プロテスタント神学の使命は、創造の秩序をいかに打破していくか、「存在の類比」をいかに否定するかということにあります。(P.41)

そこで、佐藤さんは存在の類比よりも、イエスと彼の周辺人物達との関係及びイエスと神との関係から類比の思考を現実に展開すること推奨しています。

歴史を読み解くにも、類比の思考は関係の類比を採用している点に留意が要ります。

最後に信仰についてですが、信仰は人間の愛を類比の思考に依って、その完全形/理想型を想像し、それが神の愛であると類比する不可能性の可能性という主体的な試みであることが最もよく理解できます。佐藤さんが本書でも展開されている思想は、以下のマクグラスの類比の思考に関する記述に、信仰の在り方も表出されています。宗教的思考に関する完璧な説明文です。

マクグラス:「神は愛である」と言うとき、我々は我々自身の愛する能力のことを言っているのであり、この愛が神において完全である場合を試し、想像するのである。(P.38)

これが、最も簡潔に本書の方法論と思想的な神髄を高度に概括しています。ここに、救済宗教としてのキリスト教の本質、類比の思考、関係の類比、信仰、主体的/主観的な神に対する答え方などのキーワードの全てが網羅されています。これは勿論科学とは対照的ですが、人間の思考、想像力の在り方の一種です。不可能性の可能性への挑戦、試みでもあります。これを排斥しても、人間の思考は貧困になるだけである事が最も説得的に理解でき、キリスト教、宗教的思考への偏見は雲散霧消します。

本書は、キリスト信者、非キリスト信者のみならず、全佐藤ファン必読の書です。

中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2015, 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
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