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Friday, January 23, 2015


安倍も恐れる対米従属批判で著名の中西良太さんのレビューより
イスラム国の正体の不透明性に迫った中東情勢全体の体系的分析2015/1/23
本書は、まず安易なイスラム国陰謀論などには陥っていません。

著者の国枝さんは、イスラム国の正体の曖昧さを浮き彫りにする形で、その正体に迫っており、オズの魔法使いの様にベールを簡単に捲れる相手ではありません。結論から言うと、イスラム国の構成員の全貌を正体として国枝さんが定義するところでも、イスラム国は欧米どころか、アジアからも広範な戦闘員が参加しており、直接的には正体不明である、しかし如何にそれが正体不明となるかのプロセス自体を全て、実証的に浮き彫りにして正体が逆に顕在化するというのが結論です。イスラム国とはそれが、中東情勢全体でどのような政治的役割をしているかを浮き彫りにしてしまえば、具体的な構成員はともかく、その正体は把握できます。その高度な論証を展開するのが本書であリ、タイトルは誇大ではありません。ヘーゲル的に、物自体は不可知でも、物自体の現象全体を捉えれば、我々は物自体を把握したことになるというように、ここではイスラム国に関する様々な現象を体系的に捉えて、イスラム国という本質を捉える試みが成されています。

答えとしては、アラブの春から現在までの中東情勢の中において、イスラム国がシリアを完全制覇すれば、シリア政権以外にイランを支持する国家が中東からいなくなります。イスラム国は、この方向で動いており、尚かつアサド政権崩壊が現実となっても、先のアラブの春に始まる「革命」が証明している様に、直ちにそれが事態の改善をもたらす訳ではないこともまた明らかです。エジプトも、リビアも結果は事態の悪化でした。国枝さんは、この一連の中東の政治劇の展開全体の脈絡とイスラム国を分離していません。イスラム国の輪郭は、この過程を読み込めば明白になります。また、イスラム国が純粋に土着の武装集団ではないという点は、イスラム国の正体を把握する上で、決して見落としてはいけない細部です。イスラム国、アルカイダ、コントラの間に歴史的な類比は成り立ちます。

国枝さん:アルカイーダ系の過激派でありながら、アルカイーダと絶縁してまでして国家を宣言し、カリフを頂く「イスラム国」。残酷に人質や捕虜の首を切る一方で、欧米諸国等から若者達が戦闘員として続々と参加するこの過激派グループについて、近頃いろいろ言われますが、実はほとんど分かっていません。イスラム国の実態が不明なのは、初めから明確な理念の下にきちっとした組織があって発展してきたというよりも、斜面を転げ落ちる雪だるまのように、その場対応式に腫れ上がり発展してできた組織という側面があるからでしょう。インターネットの巧みな利用実態にも、そんな一面が伺えます。(本書、P.223) 

本書は、直接捉える事ができないイスラム国の正体を、中東情勢全体の脈絡から実証的に浮き彫りにした最良の書です。

出典:
中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2015, 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
(トップ500レビュアー)    

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