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Sunday, January 15, 2017

【書評】二十世紀の精神の教訓 上―対談 (聖教ワイド文庫 30) 単行本 – 2007/4 池田 大作 (著), ミハイル・ゴルバチョフ (著)

本書では、反共の池田氏とのゴルバチョフの対話が無制限に深く展開されており読み応えがある。

まず、創価学会自体は反共であり、共産主義と社会主義とスターリニズムとボリシェビキを同一視している。

それに対するゴルバチョフの社会主義観こそが珠玉であり、21世紀の社会主義の方向性を示している。

事実関係

1、共産主義と社会主義とスターリン主義とボリシェビキは反共としては同一視されるが、ゴルバチョフは共産主義とスターリン主義を同義で使うことがあるが、ペレストロイカの本義は反スターリン主義であり、反共、反社会主義ではないというラインを明確にしている。スターリン社会主義などというタームは造語である。

2、19ページで示されるように、ソ連末期のペレストロイカは人間性を教条主義、スターリニスト官僚制から救うための上からの改革としての試みだった。官僚制自身によるそれ自身の刷新という枠組みであり、労働者運動から出た動きではなかった。ゴルバチョフは当時の状況では下からの革命はありえなかったと述懐している。いわゆる政治革命ではなかった。あくまで改革の範疇にあった。

3、単一国家状態のソ連を独立国家のゆるやかな連合国家として連邦を継続させるというゴルバチョフの主権国家連合再編成案は、彼自身の政府党官僚機構の主要部分の反乱で頓挫し、ベラルーシ協定によるロシア等主要国の独立でソ連自体の崩壊に道を開けた上に、ゴルバチョフの政権運営の可能性、基盤を崩壊させたのが8月クーデターだった。これにより、民主主義的社会主義としてソ連共産党を再編する可能性が消滅した。296ページで、ゴルバチョフ自身がクーデターの首謀者のような陰謀論を否定して改革挫折の決定打を与えたのは、国家非常事態委員会の8月クーデターであり、自身は彼らの最後通牒を退けたが、そのために政権維持の可能性も喪失し、ソ連改革が失敗したと明言している。

4、ソ連の成果をゴルバチョフは否定していないどころか、ネオリベショック療法がソ連以上の退廃をもたらしたと指摘しながら、ソ連は教育を受ける環境を整備し、労働の可能性を完全保障し、社会保障制度も整備した社会主義の成果をも肯定している。彼は、ネオリベに反対し、社会民主主義との和解の道を開いた。

コメント:ゴルバチョフが単に資本主義や反共の社会民主主義に転向したのか、それとも本来民主主義最高度の表現としての社会主義の理想をソ連末期に追求したのかは明確にしなくては、社会主義の道を資本主義思想の前に閉ざしてしまう。ゴルバチョフは、アジェンデの民主主義的方法による社会主義建設路線やネップのレーニンの漸進的な資本主義を許容しかつ統制する経済運営の方向性にあった。一党独裁や暴力を原理に高めたのはスターリンであり、マルクスにおいても民主主義と区別される社会主義というものは想定されていない。人間性は、重要であるが、階級社会という現実がある限り、教条主義の抽象に現実を犠牲にしようとする極左傾向は誤りであるが、ゴルバチョフのように階級社会という現実を階級的価値観として棄却するのは現実的ではない。ソ連崩壊は、スターリニズムの誤りとスターリニスト官僚制による長期支配は、官僚自身の資本家への転化に帰結するし、官僚主導の官僚制改革は労働者階級による変革から遊離したものであり、それを伴わないということも証明された。21世紀の反ネオリベの階級闘争は、アジェンデやゴルバチョフの闘争から学ぶべきものが多い。単なる反共のブルジョア社民ではなく、彼らの目指した民主的な社会主義の方向に本来のマルクスやエンゲルスの示した人間的な社会主義の未来がある。

Source:中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2015, 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!Workers of the world unite! Keep going, comrades! 親米親中親露!米中露至上主義!民主主義に禁句はないし、国境も文化の垣根もない!民主主義を世界へ!在日外国人への差別を止めよう!反陰謀論悪徳業者!) 



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