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Monday, August 11, 2014


裏切られた主権者国民:民主党政権とは何だったのか?そして、それは何処へ逝ったのか?対米従属 Slavish Obedience to the U.S. 批判論者の中西良太さんのレビューより
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2014/8/1
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本書では、民主党政権の担い手であった鳩山さんから、財務省と米国に隷従しシロアリ退治なき消費税増税へと公約違反を行った菅直人と小澤新党潰しの自爆総選挙で民主党政権を葬った野田佳彦らへのインタビューも収録されており、主権者国民は彼ら3つの民主党政権の言い分を相互に比較分析し、菅直人さんと野田佳彦さん政権が如何に主権者国民の願望と総意を裏切り、安倍自民党と財務省が代表する対米隷属の反動勢力に大政奉還をしたかについて、本書は避けて通れない必読書です。残念なのは、主権者国民政権の大立役者であり、第一次安倍政権を崩壊させた肝心の小沢一郎さんへのインタビューがないことです。是非、増補版で追加してください。

本書は、1998年から2009年までの民主党の政権準備期、2009年8月30日から2010年6月8日までの鳩山政権期、2010年6月8日から2011年9月2日までの菅直人政権期、2011年9月2日から2012年12月26日までの野田政権期までの民主党要人達の政策/政権運営に関する証言を纏めたインタビュー集です。

第一章 政権準備期:民主党政権崩壊の矛盾は、既にこの時期に顕著だった!
 
まず、政権準備期では既に菅直人、岡田克也らと小沢、鳩山ラインとの間でもコンセンサスがなく、対立の構図は既にこの時期から存在していたことが分かります。2009年の選挙時でも、小沢さんにより消費税増税は、選挙に負けるということで正しく封印されたし、シロアリ退治による財源確保も明示されており、国民の支持からいっても税制改革と財源確保の不備は、批判に当たらないことが分かります。これは、鳩山さんの以下の言に現れています。

「2004年の岡田代表の時の参院選挙では間違いなく、思い切って3%上げるといっていたのですが、無駄を徹底的になくす前提で、3%の消費税増税を取り下げたことが、財源問題に関しては非常に大きかったと思います。」(23ページ)

つまり、2009年の政権交代を見ても国民は、社会民主主義的改革を希求しているのです。増税は、税金の使い方の見直し、倹約なしには、国民の理解は得られないという正論が当時顕著でした。

既に菅直人らは、政権準備期において後に鳩山政権を苦しめ孤立させる財務省や外務省と結託していたことが、彼自身の以下の証言から判明しています。

「党の中の官僚出身の人が、特に財務省と外務省とはコンタクトしておいた方がいいだろうということで、インフォーマルな形ですが、こちらは5、6人、向こうも数人で、それぞれの役所と1、2回やったことがあります。そういうことも含めて、政権獲得後のことも念頭においた作業を始めていたということは言えます。」(41-42ページ)

この時期には、政府与党の一元化構想が見られ、自民党時代の官僚内閣制/省庁内閣制(行政各部の独立と癒着した族議員、部会政治による全ての政策を事前調整する仕組み)の打破という理想が提起されました。

第二章 鳩山政権:史上初の主権者国民政権は、 財務省、外務省そして米国と結託した渡部恒三、藤井裕久、仙谷由人、菅直人、野田佳彦、岡田克也、前原誠司、安住淳、 枝野幸男、玄葉光一郎の民主党悪徳10人衆によって崩壊させられました。

まず、決めては菅直人、前原誠司、岡田克也など反小沢/反鳩山派を、鳩山さんが独断人事で入閣させてしまったことが第一の誤りであり、第二は、辺野古問題で、主観的に5月までと閣議決定し、社民との連立崩壊を招き、沖縄の民意を喪失したことが崩壊の決定打になりました。また、ガソリン暫定税率の廃止反故や、政治主導確立法案も、政治主導のための内閣官房直下で予算編成まで行う当初予定した形での国家戦略局も成立しなかったが、菅直人や岡田克也ら党内反小沢クーデター派らの要求する党政調会を正しく廃止したし、郵貯を外資による民営化から守ったのも鳩山政権でした。

また、辻元氏が本書で指摘される様に社民と民主との連立共闘を自覚していた社会民主的な勢力がいる一方で、ネオリベラリズムの勢力も民主党内に多く存在し、党としてのラインが曖昧だった上に、この両者の深刻な対立が小沢派と反小沢派としてこの3年間の民主党政権を貫いていたのです。これが内部崩壊の主因でした。ネオリベラリズムと社会民主主義勢力の極端に矛盾した混在は、政治的に誤った一政党の様相です。

さらに、官僚主導政治の日本において、鳩山さんは、政策がいつの間にか各省庁の官僚主導の政務三役の政策決定と化していったという内閣の孤立状況と財務省の圧力があった事実を証言しています。(66ページ)

鳩山政権に止めを刺すべく、民主、社民、国民新党の連立合意を阻止した外務省と防衛省の忖度政治を司る官僚達の代弁者である岡田は、なんとルース駐日大使と共謀して、辺野古基地の県外/国外移設案を原案に戻すことを4月ぐらいから協議して素案を纏めていた。

岡田:私とルース大使の間で4月ぐらいから、原案に戻すということを前提に、5月に日米合意案として発表する案文を詰めたのです。(113ページ)

民主党政権の菅/岡田ラインへの米国による切り替えは、やはりこのような具体的な共謀に沿うものだったのです。

第三章 菅政権:反小沢クーデターの成功

官僚と米国は、民主党政権を菅/岡田ラインに切り替えるのに成功しました。

菅直人政権の最大の過ちは、自民党の消費税増税10%案を模倣して参院選挙であえて敗北の消費税増税10%へのマニフェストの大幅な書き換えを財務省の誘導で行ったことですし、そのために民主党政権は大敗し、自民党への政権交代は不可避の情勢に陥ってしまったことです。また、反小沢の党内変革を行い、反小沢の仙谷由人を官房長官に起用したのも誤りでした。民主党の自民補完勢力への改革が始まり、これは野田政権による自爆解散で完成します。

さらに、菅直人は政調会を復活し、反小沢キャンペーンを推進する過程で、国家戦略局の機能縮小で、官僚優遇処置を採りました。反官僚主義は、もうこの時期に既に葬られていました。

しかも、菅は消費税増税に関して、事前に一切政務三役での議論すらしていなかったことも発覚しています。(142ページ)

また菅自身が、この消費税増税の謀略を自ら証言している。それは、なんと鳩山政権の時期から菅が策謀していたのです。

菅:鳩山内閣の財務大臣の段階でそういう問題意識があって、進めていたのです。(143ページ)

また、政調会廃止という鳩山政権時の正しさに関して、片山氏はここでこう証言している。それは、主として与党族議員による政権への圧力を回避する策だったのです。

片山:幸か不幸か、民主党は政権に就いてまだ日が浅かったので、必ずしも族議員はいませんし、しかも政策調査会があまり機能していませんでしたから、自民党時代のように、与党を通じて圧力をかけることは、おそらく成り立たなかったのだと思います。(156ページ)

ちなみに、彼は、安倍政権が早速一括交付金を廃止したことを嘆いていますが、多くの国民も同じです。さらに、彼は、菅と野田政権と財務省の癒着の構造に言及しています。それは、国交省事務次官を官房副長官にして、このように人事を通して、財務省に対して、補助金改革や出先機関改革をストップするというメッセージを送ったという事実の証言があります。さらに、野田政権の人事は、財務省によるものでした。

片山:財務省は一括交付金については反対なのです。自分たちの査定権がなくなるわけですから。財務省擁立内閣などと揶揄された次の野田政権になって、官房副長官に国交省の事務次官を据えましたね。これなどは明らかに補助金改革や出先機関改革をストップするというメッセージなのです。当時、野田政権に絶大な影響力をもっていると言われていた財務省の次官などが閣僚を含む人事構想を書いたのだと思います。(158ページ)

大地震の処理に関して、菅は原子力安全/保安院そのものが原発推進の経産省の一部門で、現地住民の意見広聴会においてもやらせ質問をさせていただけでなく、事故当初何も機能せず無策であったことを証言している。(168ページ)

菅は、結局、東電を救済し、原発輸出策を打ち出し、自己矛盾する政策を連発し、支持率を急落させていきました。

ただし、海水注水の中止は、東電の武黒が、吉田所長に指示して中止させ、安倍に格好の攻撃材料を用意したことが菅の証言から分かりました。(176ページ)

また福山氏の証言では、官邸に集まった防衛省や外務省の秘書官達は、当時国民よりも米軍に密に通じていたことも判明しました。(179ページ)

米軍のスパイ達が、菅内閣を内から監視して、連絡を密にしていたのです。彼らは、総務省や現地の自治体が安否情報不明で困惑している時でも、多くの情報を握っていたし、日本人よりも米国民の退去を最優先させていました。

また、復興予算の非被災地以外へのシロアリによる流用にもあきれました。(190-191ページ)さらに、現地の自治体も問題で、中央の予算が決まらないと土砂/瓦礫の除去すら着手せず放置した対応/態度も批判の対象です。
辻元氏は、中央政治の政権交代後も、地方議会は依然として自民党勢力に支配されており、地方での政権交代は実現していなかったことを分析しています。(194ページ)ここにも、民主党政権の行き詰まりの要因があります。

第四章 野田政権:財務省による人事で組閣され、消費税大増税決定後の自爆選挙で民主党政権を自壊させ反動の役目を終えたクーデター政権

消費税引き上げが野田政権の最大功績というのは誤りです。それが、民主党政権からの小沢氏の民主勢力を離脱させ、政権を自壊させたのだからです。

野田は、基本的に安倍と同じく東京裁判史観に反対する軍国主義の対米隷属勢力に属する人物です。これには、峰崎氏の証言があります。

峰崎:彼がかつて内閣に出した質問主意書をみると、講和条約の後で、衆参合わせ四回の国会決議によって、「A級戦犯」の名誉は法的に回復されており、「A級戦犯」と呼ばれた人たちは戦争犯罪人ではないのであって、彼らが合祀されていることを理由に靖国神社に参拝しないという論理は破綻している、と言っていたのです。(215ページ)

これをみても、安倍と同じ思想を持つ野田が内閣になったのは民主党最大の過ちだったのです。しかも、彼も菅と同様矛盾した政策を実行しました。例えば、大飯原発の再稼働をしながら、2030年までの原発ゼロを宣言するなど理解に苦しむ姿勢を採りました。

野田は、尖閣諸島問題悪化の元凶ですし、彼の本書での発言に呆れました。なんと彼は、国有化について、中国に日本は領有権はもたず、所有権が変わるにすぎないという主旨の発言をしました。(235ページ)領有権と所有権の分離という詭弁は、通用しなかったのです。

さらに、彼は、国有化は米国との事前の了承に基づいて行ったことも証言しています。(238ページ)米国との緊密連携の上で、挑発するなという良心的なアドバイスも一部あったようですが、野田は最大の挑発である国有化を強行し、中国の激烈な反応を招いたのです。しかも、尖閣諸島国有化は、元々自民党案だったのであり、正に対米隷属勢力による国有化だったのです。(240ページ)

それから、本書ではTPPに就いて全く言及がないです。野田によるそれへの参加表明も致命的な打撃で、民主党政権崩壊の一因となったからです。

終章 民主党政権の最大の課題:多様な中間団体による支持基盤の再構築

連合は、既得権層であり、民主党はかといってNPOだけを取り込むだけでなく、幅広い中間団体の取り込みによる支持基盤の再構築なしに民主党はもはや再生不能であることが結論づけられます。

山口氏は、ここで、民主党勝利の基盤を農村一人区での堅実な勝利に見いだしていますし、中北氏は、民主党政権は、マニフェストに詰め込み過ぎたので、一内閣一仕事のような集約的で、体系的なそれを理想形としています。

最後に彼らは、利益集団中心で集約的な利権代表デモクラシーから、熟議デモクラシーの様に、参加のチャンネルを広げていくことに未来の新しい政治のあり方と希望を見いだしています。
 

本書は、全日本国民必読の書です。 

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