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Monday, June 9, 2014


30名の史的人物評から日本史を学び直す機会:歴史に学ぶには''もしあの時あの政治家がこう決断していれば...''という観点が必要2014/3/11
Amazon.co.jpで購入(詳細)  対米従属批判論者の中西良太さんのアマゾンレビューより
 本書は、織田信長から小泉さんに到るまでの日本史上の30名の政治的指導者の人物評である。主眼はやはり先の大戦に関連する人物達である。特に関東軍の独断専行の軍事的謀略を容認してしまい、日中事変を防止できず、国際連盟からも連盟から除外されるから閣議決定で脱退するという破綻した論理で脱退してしまい、先の大戦(元凶は日中戦争を防止できなかったこと。また実は和平交渉に応じた蒋政権との早期交渉に依る撤退で国際的孤立を打破していれば、失うものは少なかったのは明白)へ日本をミスリードすることになった四人(張作霖爆殺から柳条湖事件から上海事変までの関東軍自作自演の軍部謀略に際して、事なかれ、先送りの頓珍漢な致命的判断を繰り返した田中義一、若槻礼次郎、斉藤実、近衛文磨)の不決断が主軸であり、それとは対照的に感動的な決断を下したのは我々に負け戦にどう対応すべきかを示した鈴木貫太郎、阿南惟幾、GHQの指令で吉田内閣が追放した石橋湛山達だった。

 日本の戦争史に新しい光が当てられている点は強調されねばならない。また人物評に関連して、新たに発見された史実も紹介されていて日本史の再学習にもなる。著者は、古語を多用していることが現代の読者には難点があるとしても、本書の史観は歴史修正主義でも軍国主義史観でも東京裁判史観でもないので、読者は本書を、今日の民主主義の観点からイデオロギー的に安心して読破できる。ただし、明治政府が徳川慶喜、勝海舟のようなかつての政敵、支配勢力を含めて彼らを温存したのは、現在の人物破壊の傾向とは対照的に当時は人材総動員体制だったからとするが、あくまでそれは特権階級の一部に過ぎないことも留意がいる点である。

 著者は、歴史観が人や現実を動かす思想的な力となり得るし、思想とはまず歴史観である点を分析している。以下は著者の言葉である。
「…歴史は真実であろうとなかろうと、国民の中に醸成された『歴史観』によって現実を動かしていく。従って、誰がどのような歴史観を持つかは、極めて重要なのである。歴史は、それを読む人の歴史観を育み、その人を通じて世に広まっていく。」(P.245)

 本書は、教科書史観を脱却し日本史を新たな観点で学び直したい人や、歴史の転換点における30人の政治的リーダーの決断の是非の重みから今日への教訓を導きだしたい人にとって有用な良書です。

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