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Saturday, January 10, 2015


戦争阻止の為の必読書:アナロジカルな歴史認識がグロテスクな大きな物語から日本を救う!2015/1/8
本書は、佐藤さんが歴史認識の方法論を分類学から、神学的なアナロジーの手法へ転換した画期的な歴史書です。しかも、今の日本の論壇を支配しているのがグロテスクな、歴史修正主義、排外主義の大きな物語となっているという危惧から、単なる通史ではなく、アナロジカルに歴史を捉える思考を涵養し、知識人の最重要目標である戦争抑止に繋げることを目して執筆された愛国のインテリによる知性溢れる歴史書です。立憲主義を解さない安倍政権が、常に暴走傾向にあることを憂いながら佐藤さんは、本書の主旨を簡明に表出されています。

佐藤さん:このような状況にあって、知識人の焦眉の課題は、「戦争を阻止すること」です。そして、戦争を阻止する為には、アナロジカルに歴史を見る必要があります。(中略)アナロジカルに歴史を見るとは、今自分が置かれている状況を、別の時代、別の場所に生じた別の状況との類比に基づいて理解するという事です。こうしたアナロジー的思考は、論理では読み解けない、非常に複雑な出来事を前にどう行動するかを考えることに役立つからです。(序章、P17)

ここでは、メタファー(差異による隠喩)は、アナロジー(共通性による類比)に包摂されています。さらに、ポストモダニズムが、60年代以降隆盛し、日本の為の大きな物語構築を妨げたために、今グロテスクな排外主義の大きな物語が台頭し、戦争への気運を醸成しています。この日本の知性が陥っている危機的状況を打破する為に、アナロジカルな歴史認識の思考法を涵養するための本書が必須なのです。

本書は、大きく三大テーマを扱っています。1、資本主義と帝国主義;2、民族とナショナリズム;3、キリスト教とイスラム教です。

世界史を単なる通史ではなく、アナロジカルに読み解くとはどういう事なのか?各章の概要は以下の通りです。

第一章 「多極化する世界を読み解く」では、佐藤さんは、彼が「新帝国主義の時代」と呼ぶ現代の時代状況を、社会経済史という観点から位置づけることを試みています。1914年から現代まで、戦争の時代が続いていることから、時代状況をきちんと把握する為には、旧帝国主義と新帝国主義の時代間の戦争の差異を理解しなくてはなりません。

第二章 「民族問題を読み解く極意」では、戦争阻止という最も肝要かつ実利的なテーマを扱っています。今日の民族紛争や戦争を阻止するには、その根底にある民族とナショナリズムについての理解が欠かせません。ウクライナ危機であれ、スコットランド独立問題にせよ、民族という観点から着目してこそ理解できるからです。しかもここでは、日本の歴史課程で無視されている中東欧史まで扱われていて補習にもなります。中東欧史が重要なのは、それが民族という概念、民族の原型モデルの起源であり、それは英國やフランスなどの西欧ではないからです。基本的なナショナリズムを学びながら、歴史的事象を読みといていくことで、現代の民族問題とナショナリズムをアナロジカルに理解できます。

第三章 「宗教紛争を読み解く極意」では、日本人が苦手なキリスト教やイスラムの各宗教史概説ではなく、具体的に国家や民族を超えた枠組みであるキリスト教のEUと、イスラム国などに顕著な国民国家の機能不全の問題、さらにそれらの超国家的なネットワーク化の動きを読み解くことを主眼にしています。両者の比較から、宗教という角度に依る戦争の時代分析が行われています。EUも、イスラム国もそれらの背景には、宗教だけでなく、資本主義とナショナリズムの問題が潜在しています。

佐藤さんは、現在の新帝国主義の基本的要素を、資本主義、宗教、そしてナショナリズムであるとし、それらのかけ算でこの新帝国主義の時代が動いていると結論づけています。本書はそれをアナロジカルに読み解くことを目的にしているのです。

本書は、佐藤ファンに限らず、全日本国民必読の書です。

中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
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