20世紀の日本社会主義反省の為の必読書:「民主主義というもののもっとも重要な要素は、権力を批判する自由である。」, 2015/8/31
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レビュー対象商品: トロツキーとゴルバチョフ (単行本)
本書は、20世紀の社会主義、殊にトロツキー、レーニンの思想を正確に理解する助力となる良質の入門書です。
特に上級者でも見落としがちな価値ある諸論考を巧みに集成しています。
例えば、誤解の多い計画経済に関しても、消費者の質的要求に応える生産を目指す量より質の競争を組織する社会主義的競争と定義される概念は、今日でこそ資本主義下で要求されるものです。
質の競争を通じた量的拡大こそ真の経済的成長です。
大事なのは、無謬の国営企業や国有化自体が目的ではなくし、計画経済は市場を前提とし、市場でそれをテストし、その計画経済の運営及び計画策定は、官僚独占ではなく、消費者と生産者を参画させるのが本来の理念であったことが論証されています。つまり、ソ連初期では全国営企業化でも、集団化でもなく、それらは一部(20%)に限定されることが説かれています。
又、トロツキーが、官僚制の問題の核心を突いている箇所も的確に引用されています。それによれば、所謂腐敗とは、官僚制なり、管理層が下部からの批判を一切逃れられる状態から生まれ、またそのような非民主的な状態自体が腐敗堕落なのです。その一つの策が、労働者による自主管理能力の涵養であり、協同組合や個人企業は初期のソ連で排除されていません。労働者と資本家もその中間に多くの層があり、単純な二元論で彼らが政策決定していなかった点も秀逸です。
本書では、幾つかの最重要箇所があります。一つは、官僚階級論の否定です。
筆者:支配階級は階級支配が必要とする様々な業務を特定の集団に委ねる。すなわち税を徴収し、軍隊を組織し、秩序を維持する仕事は支配階級自らが行うことなく、支配階級の意志を忠実に履行する人々の手に委ねられたのである。官僚制は、階級支配の手段であり、道具である。(中略)官僚制は公然たる階級支配のクッションであり、カモフラージュである。官僚制が支配階級から相対的に自立するかの外観が生ずる。官僚制は自らの哲学(存在理由)を掲げ、支配階級も此れを支持する。「おおやけのために」が、そのすべてである。(本書、24-25ページ)
官僚制は、労働者による生産、流通、分配の自主管理 で克服されるが、革命の初期段階では労働者が行政官吏の任免及び監視を行い、いつでも解任でき、熟練労働者以上の賃金を取らせない抑制策が有効とされています。これは、今正に有効なネオリベ対策及び格差是正策としての曾てのレーニンの論理です。
さらに、トロツキーの官僚論が克明に再現される。
筆者:第一に、官僚は労働者階級から区別される一個の階級ではない。労働者階級から生まれ、その上に立つ様になった一個の階層に過ぎない。
(39ページ)
官僚階級論は、マルクスやエンゲルスやレーニンやトロツキーの見解とも相違し、社会主義思想ではない。これを曇らすのが、官僚層及び労働者階級内の格差です。この格差が、安定要因になっています。
筆者:最上層の官僚と最下層官僚との距離は、最下層官僚と一般労働者との距離より遥かに大きいと、トロツキーは述べた。しかも、下層官僚は常に一般労働者から徴募され、短時日のうちに中級.上級官僚へと上昇していく。(中略)あたかも賃労働のメカニズムと超過利潤の労働貴族への配分がプロレタリア革命を困難とするように、それは労働者の階級的自覚(自己統治への意欲)を曇らせ、従順なものとする。(44ページ)
超過利潤の配分にあやかる労働貴族を、ブルジョアと勘違いする程その格差は甚大ですが、あくまで生産関係において労働者です。ここを分からないマルクス主義の解説者が多いです。此れを理解すれば、マルクスの文献もより精度が高い読みが可能になります。
ちなみに、私はゴルバチョフを尊敬していますし、殊に彼のグラスノスチに関する以下のテーゼが好きです。
「民主主義というもののもっとも重要な要素は、権力を批判する自由である。」
(255ページ)
本書は、ゴルバチョフというよりも、トロツキーやレーニンの本来のソ連の最初期の理念政策を分析し、ペレストロイカに望みを託した良心の書です。
特に上級者でも見落としがちな価値ある諸論考を巧みに集成しています。
例えば、誤解の多い計画経済に関しても、消費者の質的要求に応える生産を目指す量より質の競争を組織する社会主義的競争と定義される概念は、今日でこそ資本主義下で要求されるものです。
質の競争を通じた量的拡大こそ真の経済的成長です。
大事なのは、無謬の国営企業や国有化自体が目的ではなくし、計画経済は市場を前提とし、市場でそれをテストし、その計画経済の運営及び計画策定は、官僚独占ではなく、消費者と生産者を参画させるのが本来の理念であったことが論証されています。つまり、ソ連初期では全国営企業化でも、集団化でもなく、それらは一部(20%)に限定されることが説かれています。
又、トロツキーが、官僚制の問題の核心を突いている箇所も的確に引用されています。それによれば、所謂腐敗とは、官僚制なり、管理層が下部からの批判を一切逃れられる状態から生まれ、またそのような非民主的な状態自体が腐敗堕落なのです。その一つの策が、労働者による自主管理能力の涵養であり、協同組合や個人企業は初期のソ連で排除されていません。労働者と資本家もその中間に多くの層があり、単純な二元論で彼らが政策決定していなかった点も秀逸です。
本書では、幾つかの最重要箇所があります。一つは、官僚階級論の否定です。
筆者:支配階級は階級支配が必要とする様々な業務を特定の集団に委ねる。すなわち税を徴収し、軍隊を組織し、秩序を維持する仕事は支配階級自らが行うことなく、支配階級の意志を忠実に履行する人々の手に委ねられたのである。官僚制は、階級支配の手段であり、道具である。(中略)官僚制は公然たる階級支配のクッションであり、カモフラージュである。官僚制が支配階級から相対的に自立するかの外観が生ずる。官僚制は自らの哲学(存在理由)を掲げ、支配階級も此れを支持する。「おおやけのために」が、そのすべてである。(本書、24-25ページ)
官僚制は、労働者による生産、流通、分配の自主管理 で克服されるが、革命の初期段階では労働者が行政官吏の任免及び監視を行い、いつでも解任でき、熟練労働者以上の賃金を取らせない抑制策が有効とされています。これは、今正に有効なネオリベ対策及び格差是正策としての曾てのレーニンの論理です。
さらに、トロツキーの官僚論が克明に再現される。
筆者:第一に、官僚は労働者階級から区別される一個の階級ではない。労働者階級から生まれ、その上に立つ様になった一個の階層に過ぎない。
(39ページ)
官僚階級論は、マルクスやエンゲルスやレーニンやトロツキーの見解とも相違し、社会主義思想ではない。これを曇らすのが、官僚層及び労働者階級内の格差です。この格差が、安定要因になっています。
筆者:最上層の官僚と最下層官僚との距離は、最下層官僚と一般労働者との距離より遥かに大きいと、トロツキーは述べた。しかも、下層官僚は常に一般労働者から徴募され、短時日のうちに中級.上級官僚へと上昇していく。(中略)あたかも賃労働のメカニズムと超過利潤の労働貴族への配分がプロレタリア革命を困難とするように、それは労働者の階級的自覚(自己統治への意欲)を曇らせ、従順なものとする。(44ページ)
超過利潤の配分にあやかる労働貴族を、ブルジョアと勘違いする程その格差は甚大ですが、あくまで生産関係において労働者です。ここを分からないマルクス主義の解説者が多いです。此れを理解すれば、マルクスの文献もより精度が高い読みが可能になります。
ちなみに、私はゴルバチョフを尊敬していますし、殊に彼のグラスノスチに関する以下のテーゼが好きです。
「民主主義というもののもっとも重要な要素は、権力を批判する自由である。」
(255ページ)
本書は、ゴルバチョフというよりも、トロツキーやレーニンの本来のソ連の最初期の理念政策を分析し、ペレストロイカに望みを託した良心の書です。
Cited:
中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2015, 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!Workers of the world unite! 対米従属批判!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
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