Sunday, September 20, 2015

日本の革命史から現在の世界情勢を読み解く好著:日本が一番革命に近づいた日とは?


日本の革命史から現在の世界情勢を読み解く好著:日本が一番革命に近づいた日とは?2015/9/20
日本の戦後は、対米隷属下で朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争やイラク戦争に加担してきた点を無視できません。殊に、1950年の10月、朝鮮戦争時に吉田首相が占領軍の秘密指令で北朝鮮の機雷除去に派遣した特別掃海隊の存在やこの秘密軍事行動での死者の存在も未だ国民には広範には知らされていません。

本書では、まず第一章で、イスラム国と日本の左派の内ゲバ文化、イスラム国とソ連との類比が成されます。そして、ウクライナでのロシアへの欧米の譲歩は、対イスラム国対策で二正面作戦を回避する戦略である一方、欧米はさらにイランの核開発に譲歩し、それがさらにサウジアラビア/パキスタン秘密協定で中東で核開発、核保有の連鎖が拡大し、最終的にイスラム国に核が渡る危険が分析されます。

第二章では、戦後日本における革命史が語られます。同時にソ連とイスラム国、コミンテルンとイスラム国の類比がされています。コミンテルンが、世界革命運動と国家の分離で、イスラム国はその統一体とされていますが、ソ連はあくまで国家ではなく、連邦です。

佐藤さんは、1919年のコミンテルン創設を世界革命の放棄としてレーニンを一国社会主義として規定しています。反共のスターリニスト的観点が披瀝され、大変興味深いです。これは、宮崎氏が新鮮と形容した箇所(92ページ)ですが、スターリニスト達は、レーニンを正に一国社会主義としてスターリン主義を合理化しました。また、コミンテルンはレーニンやトロツキーも関与している世界革命運動を企図した機関です。そして、ソ連邦の孤立と1924年に登場した一国社会主義論は別の観点であり、世界革命を企図するのは一国だけでは社会主義の最終的勝利は得られないからです。また、スターリニスト達が世界革命を放棄していなかったという観点は、彼らが帝国主義的政策の拠点としてコミンテルンやコミンフォルムや各国共産党を操作しており、それが崩壊当時迄継続していたということです。では、第4インターナショナルも、国際革命運動機関の創設=世界革命論の敗北=一国社会主義を前提にしていたからトロツキーもスターリン主義だと正に頓珍漢に言えてしまうでしょう。マルクスも、スターリン主義だという結論になってしまいますね。完全な反共史観です。

ここには、彼の官僚階級論と同様に、正統マルクス主義とは異質のものが思想的に混在しています。しかし、佐藤さんも日本の革命の方法論を分析しています。

佐藤さん:そのためには、合法的な形で自衛隊や警察の様な暴力装置は、自分たちの手の内に置いておく。それから大衆動員ででも、大規模集会ができるような体制にしておく。この両者をパッケージで掌握す。それがあって、初めての革命のはずです。(103ページ)

正にこれが有効な革命論です。さらに、佐藤さんは、日本の革命を考える上で、日本共産党史を学ぶべきだと説いています。

私は、ここで日本の革命に関しては、日本が最も革命に近づいた日である1947年の2.1ゼネストを挙げますが、徳田と伊井はその決行の前日にマッカーサーの指令であっさり放棄し、そのリーダー格の裏切りでその後の日本の労働/革命運動に深刻な打撃を与え、革命運動を葬りました。これに、占領軍が図った日本共産党打倒への工作である3事件が追い打ちをかけました。

革命と、大多数のカンパニア運動のデモは対極にあり、後者は世論に訴える為だけのお祭り騒ぎに過ぎません。大衆デモとはいえ、似て非なるものです。

宮崎氏はこう、日本の革命史を概括しています。

宮崎氏:要するに、日本の革命は1947年の2.1ゼネストが挫折した時点で終わっていた。その後に学生運動の季節が始まる訳ですが、それも内ゲバの時代を経て、徒花の様に咲いて散ってしまった。そんな戦後70年だったと思います。(156ページ)

第三章は、日本の資本主義革命であるバブル経済が曾ての中華街である神保町での地上げの例で語られます。また、ネオリベやアベノミクス(株の公的資金に依る吊り上げ工作による安倍政権支持率維持策)の話も簡潔で核心を突いています。佐藤さんは、日本が帝国主義的な膨張策を採らぬ限り戦争に巻き込まれないし、日本の社会は漸進的に貧困が蔓延していき、貧困は人を思考停止させるために教育の劣化も進行するが、人口が多いので一気に崩壊はしないと悲観的且つ、楽観的ですね。本書は、左派との対談ですが全体としては右派色ある印象です。佐藤さんが他で言われる様に、日本も新帝国主義国なのだから、戦争に巻き込まれる危険はありますね。

本書は、全佐藤ファン必読の書です!

Cited:

中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2015, 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!Workers of the world unite! 対米従属批判!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
(トップ1000レビュアー)   

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