Saturday, January 2, 2016

押しつけ憲法論を完璧に反駁する科学的日本戦後史論


分割された領土―もうひとつの戦後史 (岩波現代文庫)
分割された領土―もうひとつの戦後史 (岩波現代文庫)
進藤 榮一著
エディション: 文庫
価格: ¥ 1,296

5つ星のうち 5.0 押しつけ憲法論を完璧に反駁する科学的日本戦後史論2015/11/25
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本書は、進藤さんが豊下さんと同様に最高度に日本の戦後史の核心的問題の全てを解明しています。

問:裕仁は本当に戦中に戦争反対だったのか?
答:いいえ、裕仁は戦争継続派でした。

1945年の2月14日時点で近衛文麿が吉田茂と上奏した降伏勧告に対して、裕仁は戦争継続を明言しました。

裕仁:もう一度戦果を挙げてからでないと、中々話は難しいと思う。

こうして、裕仁は原爆投下されても戦争継続しました。(本書、p.11)

問:沖縄は占領時の位置づけはどうだったか?

答:台湾は米帝にとって沖縄以上に戦略上重視していますし、当初は米軍ではなく国連軍のための基地という位置づけでした。

進藤氏:…基地は決してアメリカ軍用のものではなく、当時想定された国連軍のためのものであったことに、また琉球の戦略的重要性が台湾の重要性よりはるかに低く評価されていたことに、注意しておかなくてはならない。(本書、p.32)

問:米帝が千島列島の領土問題を反ソ世論醸成のために創作したのは本当か?
答:はい、それは推測でも、コシミズやフルフォード的な陰謀論でもなく、米軍側が明言しています。それは、沖縄の軍事占領で起きる反米を緩和するために、創作された反ソ工作です。

米政府:もし、南千島が日本側の領土復帰運動の争点になるなら、それは日本国民の対ソ怨念の原因となり、日本国内におけるソ連の将来の宣伝活動の効果を相当程度弱め、かつ、ソ連の目的に奉仕しようとする日共の努力を阻害することになる。(PPS 65th.Meeting, Sep.22 1947, pp.9 and pp.32. PPS papers, National Archives)

問:サンフランシスコ講和条約は片面講和条約で、反ソ反中の裕仁の奸計に米帝が同調した産物ですが、その本質は何処にありますか?

答:米帝は、巧妙に同条約に千島列島の領土問題を創作し、さらに対ソ交渉禁止条項を加えました。それは、千島での対ソ譲歩は、琉球放棄になるという脅しです。

進藤氏:講和条約26条の形を借り、もし日本が千島に関し、ソ連に利益を与えた場合、アメリカにもまた同様の利益を与えなければならないという、事実上の対ソ取引禁止条項が加えられました。(p.72)

これは、千島列島問題と沖縄問題、尖閣諸島問題の固定化条項です。領土問題を日本と周辺国間に創作し、固定し米帝自身の利益を極大化するダレスの工作です。諸悪の根源は、米帝と戦前からの従米支配層です。

問:日本国憲法は単純な押しつけ憲法なのですか?

答:いいえ、それは草案としては1942年、43年、44年から準備され、日本の中道左派とGHQとの間で土着化=本土化、反動と国際化というせめぎ合いの中で構成された日本史上初の民主的な憲法です。そして、それはその成立過程で芦田修正で自衛の為の武力保持は禁止されていないし、生存権の確立と1946年の日本初の労基法制定など労働者階級にとって極めて重要な革命の成果です。

進藤氏:少なくとも42年、43年、44年ぐらいから準備され、そして、これから申し上げます土着化と国際化という二つの外側からの入力によって、日本国憲法の普遍性が生み出されていたのです。(p.188)

問:日本国憲法はナチの手口によるワイマール憲法の形骸化を教訓にしてナチの手口を防止する意図が込められていたのか?

答:はい、それが制憲過程において日本側の最重要人物芦田均によって意図されています。ここに、日本国憲法の真の価値が明確になります。

ワイマール憲法に関する鈴木義男と芦田均の対話は日本国憲法理解の上で必読です!

鈴木氏:あの憲法はそのままいっていれば、ドイツは救われた。所謂民主戦線もできず、ナチスにしてやられてしまった。つまり、全く歪曲されてしまった……

芦田:だから、日本国民が実行しうる憲法を作っておかなければならない。

(本書、p.231)

ここに、国際化と本土化両方を重視して日本国憲法を修正資本主義の民主主義的憲法たらしめ、押しつけ憲法などではないその価値を鼎立した知的証左があります。

特筆するべきは、日本国憲法の成立過程で最重要の日本側の貢献である芦田均による芦田修正です。これは、9条に含みをもたせ最低限の自衛権保有による未来の日本の対米独立の可能性とその合憲性を巧みに死守したことです。

また、社民勢力により日本国憲法に生存権や労働改革が盛り込まれたり、日本側の憲法制定過程での決定的な土着化と国際化の動きと、明治憲法への回帰を目指す反動勢力との対立過程の産物としての日本国憲法である点が理解できます。

世界史的には、フランス人権宣言やアメリカ革命の文脈系譜にある憲法が日本国憲法であり、絶対護憲論の原理主義の史的極左的過誤が見事に反証されています。

私も、ノリエガ始末後に米帝が制定させたパナマ改正憲法の軍隊放棄とは、日本国憲法は異質である点が理解できました。

さらに、ソ連が日本占領をアメリカ単独にまかせ侵略の意図がなかった事や、尖閣諸島だけでなく、千島諸島も、主権帰属不明の状態で、領土問題をつくるというサンフランシスコ講和条約を占領期以前から準備していた点も分かります。

進藤さんの史的探求は、その科学性においても、愛国心においても今日の日本の他の論客の追随を許しません。

本書は、全日本国民の必読書です。

Source:中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2015, 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!Workers of the world unite! 対米従属批判!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
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