Wednesday, December 24, 2014


対米従属に反対する人々の意見

アメリカ合衆国とのどのような関係を対米従属と認識し評価するかは、論者の認識・感情・意見・社会的関係により異なる。具体例として左派・右派ともに下記のような様々な事例がある。
  • 対米従属反対、対米自主独立の先駆者である元外務大臣重光葵は、敗戦直後日本社会の政官商民の対米従属が主流となる中、こうした状況に就いて次の如く見解を表明している[138][139]
……結局、日本民族とは、自分の信念をもたず、強者に追随して自己保身を計ろうとする三等、四等民族に堕落してしまったのではないか……
……節操もなく、自主性もない日本民族は、過去においても中国文明や欧米文化の洗礼を受け、漂流していた。そうして今日においては敵国からの指導に甘んじるだけでなく、これに追随して歓迎し、マッカーサーをまるで神様のように扱っている。其の態度は皇室から庶民に到るまで同じだ。……
……はたして日本民族は、自分の信念をもたず、支配的な勢力や風潮に迎合して自己保身を計ろうとする性質を持ち、自主独立の気概もなく、強い者にただ追随していくだけの浮き草のような民族なのだろうか、いやそんな事は信じられない。いかに気持ちが変化しても、先が見通せなくても、結局は日本民族三千年の歴史と伝統が物をいうはずだ。かならず日本人本来の自尊心がでてくると思う。
— 重光葵『続 重光葵日記』[140]
  • 在日米軍問題の専門家で沖縄国際大学教授の前泊博盛は、日米行政協定(現日米地位協定)が、米軍による日本の主権侵害を許し、対米従属をもたらしている核心的な不平等協定のみならず、原発再稼働問題や検察ファシズムといった構造的な弊害をも日本社会にもたらしている事を分析してこう言っている。[141]
国内に巨大な外国軍を駐留させ、10万人近いその関係者たちに治外法権を与え続けた結果、日本の国内法の体系は完全に破壊されてしまいました。たとえば米軍基地の違憲性を争った1959年の砂川裁判(砂川事件)では、日本の最高検察庁がアメリカのハーター国務長官の指示通りの陳述を行い、田中最高裁長官は大法廷での評議の内容を細かくマッカーサー駐日大使に報告し、アメリカ国務省の考えたロジックに基づいて判決を出したことが、アメリカの公文書によってあきらかになっています。憲法を頂点とする表の法体系の裏側で、米軍基地の問題を巡って、アメリカが日本の検察や最高裁を直接指示するという違法な権力行使が日常化してしまった。それが何度も繰り返されるうちに、やがて「アメリカの意向」をバックにした日本の官僚達までもが、国内法のコントロールを受けない存在になっています。そのことが現在の日本における最大の問題になっているのです。[142]
— 前泊博盛
  • 在日米軍による基地問題で、日米安保条約が米軍兵による強姦事件(Sex crimes)発生率が米本土以上の82%という沖縄県民の児童、女子の安全を保障していないことを批判して、沖縄の詩人にして沖縄県立普天間高等学校化学教員のBen Takaraはこう見解を述べている。[143]
私たちは一度私たちの女子生徒達に登校或いは帰宅途中に米兵により怖い思いをさせられた経験がないか調査を行いました。なんと3分の1から全校生徒中の2分の1の女子生徒がイエスと答えたのです......強姦事件(The rape case)...というのは氷山の一角に過ぎないのです。私は日米安保条約が沖縄人の安全を保障していないということを言わねばなりません。[144]
— Ben Takara
  • 2002年4月、横須賀でアメリカ海軍の空母・キティーホークの乗組員兵に強姦されたうえに、神奈川県警で同署の6名の警察官からセカンドレイプの被害を受けた在日オーストラリア人キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんは、レイプに反対なら、米軍継続駐留の法的根拠である日米地位協定を変えるべきであると提案し、こう見解を述べている[145]
私は、1980年代から日本に住んでいるオーストラリア人です。横須賀に入港したアメリカ海軍の空母・キティーホークの乗組員であるDに基地近くの私の車の中でレイプされました。私は、すぐに神奈川県警に事件を届け出ました。しかし、県警では6人の警官に何時間もからかわれたり笑われたりしながら尋問され、露骨に性的な言葉も口にされました。最初は治療も水も食べ物も拒絶され、犯罪の法的証拠のカギとなる尿検査用の容器も拒否されました。12時間くらい取調室に拘束されましたが、体に付着した証拠物もDNAも採取、保管すらされませんでした。これはセカンド・レイプです。警察は加害者がDであることを突き止めましたが、嫌疑不十分だとして起訴しませんでした。在日米軍兵士による犯罪はあとを絶ちません。2012年10月16日には、沖縄本島中部でアメリカ海軍所属の兵士2名が女性を襲い、集団強姦致傷の犯罪を犯しました。翌11月2日深夜には、アメリカ空軍の兵士が沖縄県読谷村で酒に酔って女性会社員宅に押し入り、息子の中学生の顔を殴って1週間のけがを負わせ、テレビを蹴ったり床に引き倒したりして壊した事件がおきました。日米地位協定と呼ばれている在日駐留米軍に関する日米間の合意は1960年に調印されました。その第17条1のbには、「日本当局は、米軍の構成員と軍属、およびその家族に対して日本の領土内で起きた犯罪に関しては裁判権を有し、日本の法律により罰することができる」と規定されています。しかし、現実にはほとんどの場合裁判しないで放置しています。それは、日米間で、公務外の犯罪の場合、日本側に裁判権がある大部分を放棄する密約があるからです。地位協定は、密約を含めて、米軍・米兵にさまざまな特権を保障しており、犯罪の被害者の人権をこのうえなく蹂躙するものです。私は、神奈川県警のセカンド・レイプに対して、神奈川県を相手に国家損害賠償請求訴訟を起こしました。しかし、1・2審、最高裁でも敗訴になりました。本当にショックです。日米の裁判所がDの刑事責任を問わないので、私は彼に対する民事訴訟を東京地方裁判所に起し、2004年11月、300万円の支払いを命じる判決を得ました。しかし、私も裁判所も知らないうちに、アメリカの海軍は提訴直後に密かにDを名誉除隊にしてしまい、彼はアメリカに帰国し姿をくらまし、支払いに応じませんでした。私は、がまんができなかったので、アメリカに行ってDの所在を突き止めました。何と彼は、家を9つも持って優雅な生活をしていました。そこで、私は、アメリカの裁判所に日本の民事裁判の判決の承認を求めています。レイプ事件では、他国の判決に関するこのようなケースは世界で初めてだそうです。今年(2012年)の11月に3日間沖縄に行きました。県庁の記者会見室で壊れたソファ(sofa)をみて、提案を思いつきました。「レイプに反対なら、地位協定(SOFA=Status of Forces Agreement)を変えるべきです」。地位協定の16条には「日本国において、日本の法令を尊重し…」とあります。しかし、もっと強く、従う(obey)義務があると書き換えるべきです。私は、事件から8年間は人とご飯を食べられないなどのPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんできました。私は子どもが3人いますし、また。11年間に渡る裁判のことでもたくさんのおカネを使い経済的にも大変です。私を動かしているのは、「愛」です。今の時代、おカネや戦争が愛されています。しかし、平和のために人を殺すのはおかしいです。愛はすべての人間にこそ向けられるべきものです。愛は、米軍や政府よりパワフルです。[146]
— 米兵犯罪被害者キャサリン・ジェーン・フィッシャー
そもそも日米地位協定では、使用されない施設や地域は返還される事になっている。ましてや「日本固有の領土」と内外に強調している尖閣諸島を構成する主要5諸島のうちの2島嶼(久場島大正島)の返還を、日本政府はなぜ求めようとしないのであろうか。返還されない限り、「米軍の許可」なしには、この「固有の領土」に日本人は立ち入れないのである。[147]
— 豊下楢彦
...数年程前からは、マポーチョ川では飢えた人々が市場から投げ込まれる食物のくずを犬や禿鷲と奪い合っている。シカゴ学派に倣って軍事評議会が実行したチリの奇跡の裏側である。チリはアジェンデ政府までは控えめな国であっただけでなく、保守的なブルジョアジーですら民族の徳として簡素さを誇っていたような国である。軍事評議会は自分たちこそチリをすぐにでも繁栄させることができるのだということを示そうとして、アジェンデが国有化したものを全て民間に返還し、国を民間資本や多国籍企業に売り渡した。その結果はなんであったかと言えば、目のくらむような、だが必要のない贅沢品と、ブームの幻想をふりまいただけのお飾りの公共事業の爆発に過ぎなかった。輸入はわずか五年間のうちに過去二百年の総額を上回ったが、それができたのは国立銀行の国営企業売却金で保証されたドル建ての信用のためであった。残りはアメリカ合衆国と国際信用機関の共犯によるものであった。六ー七年の幻想が一挙に崩壊したのである。チリの対外債務はアジェンデの最後の年には四十億ドルであったものが、今日ではほぼ二百三十億ドルにも達している。この百九十億ドルの浪費の社会的犠牲が如何なるもであったかを知るには、マポーチョ川の大衆市場を歩いてみるだけでよい。つまるところ、軍事政権の奇跡はほんの一握りの金持ちをますます肥やし、その他のチリの国民をますます貧困の奈落に陥れたのであった。
— ガルシア・マルケス『戒厳令下チリ潜入記-ある映画監督の冒険』[150]
  • 対米従属を批判する人が日本国憲法を擁護し、対米従属だと批判される人が日本国憲法の改定を主張することがおかしいとの批評があるが、その批評は、戦後の米国外交路線の大転換である日本の弱体化と平行した民主化占領政策の1947年からの「逆コース」の事情を理解しないことから生まれているとする見解。[151]
  • 押し付け憲法論自主憲法論を掲げる人が、連合国軍占領下の日本で制定された日本国憲法の維持を主張することを対米従属であるとする評価[152]
  • 日本国憲法第9条を維持することを主張する人が、同条も含めて日本国憲法の改変を主張する人々に対してアメリカ合衆国(国防総省・国務省)の言いなりになって日本を侵略戦争をする国に変えようとする対米従属であるとする評価[153]
  • アメリカ合衆国議会・政府が遂行したアフガニスタン戦争イラク戦争に反対する人が、日本政府やイギリス政府やオーストラリア政府がアフガニスタン戦争やイラク戦争に協力することを対米従属だとするという評価[154]
  • 地球温暖化に懐疑的で温暖化予防対策に反対する人が、日本政府やイギリス政府がアメリカ合衆国政府と協力して、地球温暖化対策のための京都議定書を採択し、地球温暖化抑止政策を主張し遂行することに対して、対米従属であるという評価。
  • 商業捕鯨や調査捕鯨の復活を主張する人が、アメリカ合衆国政府やイギリス政府やオーストラリア政府と協力して、商業捕鯨の禁止・調査捕鯨の規制政策を主張し遂行することに対して、対米従属であるという評価。
  • 日本が統治していた時代に朝鮮台湾は発展したので、日本が朝鮮と台湾を統治したことは正義である。日本は欧米の植民地支配からアジアを開放するために大東亜戦争を戦い、戦争の結果アジア諸国は独立したので、日本が大東亜戦争を戦ったことは正義である。日本が日本の統治や戦争の関係各国に対して反省・謝罪をして関係修復することは、アメリカ合衆国のウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムに洗脳されて、日本の統治や大東亜戦争の正義を否定することであるという極右にみられる評価[155]
  • 極東国際軍事裁判は連合国軍占領下の日本で行われ、日本の政府・軍の幹部が戦争犯罪人として有罪判決を受け刑を執行されたこと、日本の議会・政府がサンフランシスコ講和条約で、極東国際軍事裁判の判決を受け入れ、刑の執行を誓約したことは、日本の正義を否定することであるという評価[156]
  • アメリカ合衆国の占領統治下で、大日本帝国憲法が破棄され日本国憲法が制定されたことは、日本の主権に対する侵害であり、日本が国民と国会議員の多数意見として、日本国憲法を破棄して自主的に憲法を制定することもなく、日本国憲法を改変もすることなく維持していることは、大部分の日本国民がアメリカ合衆国に洗脳され、属国として支配されている証明であるという評価[157]
  • 日本がアメリカ合衆国と軍事同盟(日米地位協定日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)を締結し、アメリカ合衆国軍に基地を提供することは、日本の主権・独立・自立・中立を放棄し、アメリカ合衆国の覇権主義的、帝国主義的外交・軍事政策に組み込まれ、アメリカ合衆国の戦争に協力することであるから、日本はアメリカ合衆国との軍事同盟は解消し、在日米軍基地も完全撤去すべきであるという評価[158]
  • 日本とアメリカ合衆国との間で貿易や投資の規制を減少させ、貿易や投資を自由化することは、日本の産業・経済や日本国民の労働が産出する付加価値が、アメリカ合衆国に一方的に搾取収奪され、日本の企業がアメリカ合衆国の企業に買収され、アメリカ合衆国の企業に市場を支配され、アメリカニゼーショングローバルスタンダードと称して強制され、日本国民の生活がアメリカ合衆国に支配され、日本をアメリカ合衆国の経済植民地化することであるから、貿易や投資の自由化は拒絶すべきであるという評価[159]
  • アメリカ合衆国で作られた政治・軍事・経済・産業・科学・技術・芸術・文化が日本に流入することは、世界の諸国の多種多様な文化を破壊し、世界の多様性を破壊して、アメリカ合衆国が世界にアメリカンスタンダードを強制し、世界をアメリカンスタンダードで支配しようとすることであるから、世界の諸国の文化と多様性を守るためには、アメリカンスタンダードを拒絶すべきだ、という評価。
  • 国民新党は公式サイトにおいて、“郵政民営化は日本の350兆円の資産強奪が目的であり、米国では日本へ民営化を押し付けておきながら、自国では国営の郵便事業を守り続けている、アメリカで郵便庁に勤務する約86万人は公務員で、大統領委員会は今後も公的機関が郵便事業を行うのが望ましいと結論づけている、「公営は時代遅れ」という言葉が、わが国の虎の子、国民の財産である350兆円を奪うための虚偽宣伝であることは明白”との見解を発表している。2005年の「郵政解散」翌日のフィナンシャル・タイムズにも「日本はアメリカに3兆ドルをプレゼント」と題する記事が掲載された。旭日旗がぼろぼろにされ、中央の穴の中にシルクハットにマント姿でアタッシュケースを持った西洋人が入っていく風刺画が添えられていた。
  • 孫崎享は、親米保守と反米保守という対米従属派のイデオローグによる二元論に疑義を呈し、従米右翼という戦後日本のナショナリズムの歪さを指摘して、日本の主権を侵害している主体が米国であると指摘し[160]、中国や朝鮮半島が批判の対象になっていることに疑問を呈する旨の発言をしている[161]。そして、対米従属とされる吉田茂を代表格とするいわゆる戦後の日本の保守本流なるものの根本は、従米であると指摘している[162]。さらに戦後、米国に依る裏工作で日本の対米独立派達がパージされてきた歴史的過程を指摘している[163]
戦後の政治家の中でも、重光葵や芦田均、鳩山一郎、石橋湛山、田中角栄、小澤一郎、鳩山由紀夫ら、自主独立を貫こうとした政治家の多くはパージされてきました。同様に、外務省や大蔵(財務)省、経産省の中で自主路線を目指した官僚も、アメリカの顔色を窺う首相官邸から放たれた矢によって倒れ、現在では対米追随路線が圧倒的な主流となっています。
— 孫崎享アメリカに潰された政治家たち』[164]
さらに、海外からも日本の対米従属派がナショナリストを自称し、本来日本の国益を米国に優先する勢力が反日扱いされるサンフランシスコ体制に矛盾が生んだ日本人のアイデンティティを危惧する声もある。例えば2014年刊行の『転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』において対米従属問題研究の国際的な権威であるガバン・マコーマックとジョン・W・ダワーがそれを指摘している[165]
  • 2010年に対米自立闘争の戦略的理論書『日本の独立』(飛鳥新社、2010年)を上梓した日本の政治経済学者の植草一秀は、日本は戦勝国アメリカにとり戦利品であるという観点から、占領軍の日本撤退を定めたポツダム宣言第12条に言及し戦後の継続駐留との矛盾を指摘しこう見解を述べている。
これらの条文に従って解釈すると、本来日本の「独立」とは、「日本から占領軍が撤退すること」をもって達成されるということになります。ところが現実はこれとは異なるものでした。米ソの冷戦が激化するなかで、米国が日本の「独立」を許さなかったのです[166]
— 植草一秀『アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪』
  • アメリカの国際政治学者チャルマーズ・ジョンソンは、2004年の論文『武力は過ちを犯す』で米軍の東アジアにおける基地帝国主義政策を批判して、こう提言している。[167]
アメリカは、東アジアの国々との協定を変更し、アメリカ軍を無制限に駐留させることなく、国家対国家の対等な同盟関係に転換していく必要がある。米軍を前進配備することは、それ自体紛争を誘発しかねず、東アジアの大きな不安定要因になっているからだ。また米軍施設が東アジアの国々の中にアメリカの飛び領地のように存在する事は、道義上の問題を引き起こしており、のちのちの信頼関係と協力関係を築いていくための基盤にひびを入れている。(中略)この現状に東アジアの衛星諸国は早晩反旗を翻すだろう。十年程前に、東ヨーロッパのソ連衛星国が示してみせたように。そうなってはもう手遅れだ。西太平洋地域に於けるアメリカ軍の存在によって得て来た何もかもが失われてしまっているだろう[168]
— チャルマーズ・ジョンソン『武力は過ちを犯す』
  • 米国主導のTPPが日本のみならず、アジア全域を帝国主義的に米国の多国籍企業の支配下へ置き、アジア諸国の広範囲の対米従属化を危惧する批判の声もある。例えば、日本の農業経済学者鈴木宣弘は、2013年の著書『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』で、以下のように分析し見解を述べている [169]
......アメリカは、アジアがアメリカ抜きでまとまることは絶対許さないと言い続けてきた。TPPを推進する人々が言う。『TPPがアジア・太平洋のルールになるから入らないと日本はガラパゴスになる』とか、『アジアの成長を取り込むにはTPP』と言った見方は当面嘘である。あるアメリカ大使館員の方は筆者に話した。『TPPは中国包囲網だ。日本は中国が怖いのだから、入らなけりゃだめでしょ。』と。中国もインドネシアもインドも韓国も、TPPにはNOといっている。当面はTPPでアジアが分断されて、アメリカの利益には都合が良い。そして、これだけ経済規模の大きい日本がTPPに参加すれば、周辺の国々もゆくゆくは入らざるを得ないようなことになれば、アメリカ抜きのアジア圏でなく、アメリカの巨大企業の利益を最大化できるアジア太平洋圏を形成できる。
— 鈴木宣弘『食の戦争 米国の罠に落ちる日本』[170]

対米従属であると非難されているもの

以下は関連文献等で対米従属と批判されているものである[171][172]

国務省による声明

2006年7月、アメリカ合衆国国務省中央情報局(CIA)と日本政界との間の秘密の関係を認める声明を発した。これにより、従来から囁かれていた自民党及び民社党への工作が事実であった事が判明した[229]。ティム・ワイナーは、自著『CIA秘録』で、CIAによる他国の未来の元首となる政治家(岸信介)の買収工作をコールドキャッシュ(Cold Cash)と呼び、CIAの傑出した外国政府の買収工作の実態を指摘している[230]
アメリカ政府は、日本の政治の方向性に影響を与えようとする四件の秘密計画を承認した。左翼政治勢力による選挙を通じての成功が、日本の中立主義を強化し最終的には日本に左翼政権が誕生することを懸念したのである。アイゼンハワー政権は1958年5月の衆院議員選挙の前に、少数の重要な親米保守政治家に対しCIAが一定限度の秘密資金援助と選挙に関するアドバイスを提供することを承認した。援助を受けた日本側の候補者は、これらの援助がアメリカの実業家からの援助だと伝えられた。……
……重要政治家に対する控え目な資金援助計画は、その後1960年代の選挙でも継続された。……
……もう一つのアメリカによる秘密工作は、極端に左翼的な政治家が……
……選挙で選ばれる可能性を減らすことを狙ったものだった。1959年にアイゼンハワー政権は、より親米的な『責任ある』野党が出現することを希望して、穏健派の左翼勢力を野党勢力から切り離すことを目指した。秘密工作の実施をCIAに承認した。この計画での資金援助は限られていて―1960年には七万五千ドル―、1960年代初期を通じて基本的に同じ水準で続けられた。……
……一方、日本社会の重要な要素に働きかけて極左の影響を拒絶させることを目指す、宣伝と社会行動にほぼ等分されたより広範な秘密計画は、ジョンソン政権の全期を通して継続された。これには控えめな水準の資金―たとえば1964年には四十五万ドル―が提供された。……
歴史的には、1952年以降日本に於ける民衆の在日米軍への抗議反抗はベトナム戦争終結以降まで広範に繰り広げられていた。そこで米国は単一政党支配を維持すべく1949年(自民党結党前)から1993年まで長期にわたり、CIAの与党自民党への財政支援が継続された。これは、長期安定した衛星国統治の為の対米従属政権としては同様にソ連の長期傀儡政権であった東ドイツと並んで記録的であるとされている[232]

対米協力者の養成

更に、2008年に発行された、ティム・ワイナーニューヨーク・タイムズ記者の『CIA秘録』(原題:Legacy of Ashes)で、第二次世界大戦後の日本をアメリカ合衆国の友好国・同盟国にし維持するために、CIAが日本の政財界の大物に協力させ、引き換えに活動資金を提供していたことが、機密指定を解除されて公開されたCIAの資料や、元CIA職員への聞き取り調査で明らかになった[233]。CIAが資金提供した協力者の中には、岸信介(時の首相 満州国で官僚も務めたA級戦犯だったがアメリカの対日政策転換、いわゆる「逆コース」により罪を不問に付された[234])、正力松太郎読売新聞社元社主)、児玉誉士夫(実業家で大物右翼)などの社会的影響力がある人物が含まれていた。また自由民主党が結成される一助になっていたことも確認されている。さらに、アメリカの歴史学者マイケル・シャラーが1997年に出版した日米関係研究書『「日米関係」とは何だったのか―占領期から冷戦終結後まで』(原題:Altered States: The United States and Japan Since the Occupation)で、後に岸信介が対米自立の傾向を強めると、CIAは当初吉田茂に岸を交代させようと策動し、結果1960年6月20日のマッカーサー駐日大使と吉田茂の面会で両者は池田勇人を岸の後継として選定した事が、翌日の池田のマッカーサーへの返答で判明している。[235] CIAは、米国の諜報工作の中心であり、CIAの活動手段は、軍や官憲当局者を自分たちの手で育て、権力につかせ、始末したい人間が出てくるとその名を連中に知らせるというパタ−ンである。また60年代以降の最盛時には、CIAは日本国内に100人以上という在外支局としては世界最大規模の要員を配属し、自民党社会党議員、政府省庁職員、朝鮮総連幹部、左翼過激派、商社員や政府民間、与野党、在日、右翼や左翼勢力に到るまで広範に定期的に報酬を渡して秘密の情報提供者としてきたことも発覚している[236]。その元長官ウィリアム・E・コルビーは1978年発表の著書『栄光の男たち コルビー元CIA長官回顧録』で以下の如く対米従属化の為の諜報工作に関してこう証言している。[237][238]
これらの活動で根本的に重要なことは秘密保持である。米国政府が支援しているとの証拠がでては絶対にいけない。そのため、金にせよ、……
……単なるアドバイスにせよ、援助はCIAとなんの関係もなく、米国大使館とも関係のない第三者を通じて渡された[239][240]
— ウィリアム・E・コルビー『栄光の男たち コルビー元CIA長官回顧録』
さらに著名な事例の一つとしては、レーガン政権は、通称イラン・コントラ事件で、1984年のボーランド修正法で禁止されたニカラグア政府転覆の為のCIA秘密作戦への税金使用を違法にも無視し、1986年同法が失効するまでイランへの武器売却による数百万ドルを、活動資金として巧妙に仲介人を通して、元ソモサ政権の敗残兵達をホンジュラスにあるCIA基地で訓練し、ニカラグアへ送り込んだ非土着の従米反政府テロ組織であり、1980年代に何千人ものニカラグア農民を虐殺したコントラに渡していた[241]
国際的な従米反政府テロ組織コントラ
さらに、1989年の米国のパナマ侵攻では、米海兵隊2万6千人が深夜にパナマを奇襲し、数千人の被害者を出したが、この目的であるマヌエル・ノリエガは、CIAの支援を受けた米国の傀儡だった。1960年代以来彼は、CIAから給料を受け取り、ジョージ・H・W・ブッシュは1976年にCIA長官になった際、フォード大統領時代からのCIA工作員であるマヌエル・ノリエガを引き継いだ。ジョージ・H・W・ブッシュは、麻薬取引の証拠のあるマヌエル・ノリエガの年俸を10万ドル以上引き上げ、パナマ報告から麻薬取引に関する要件を削除した。後に彼は1983年CIAの協力でパナマ軍総司令官になった。それから彼は、イスラエルとCIAの武器商人、軍産複合体と組んで兵器供給ネットワークを構築し、コスタリカ北部のコントラに供給した。しかし、岸信介やオマル・トリホスやスハルトなど他のCIA工作員となった傀儡政権が対米自立へと変節した事例のように、マヌエル・ノリエガも中米での米国の軍事行動に非協力的になっていった。1984年には彼は、コンタドラ平和会議で中米諸国の首脳を招いて中米への米国の軍事介入終結を呼びかけた。これが、レーガン政権を憤激させ侵攻へと繋がったのである[242]
他国の国家元首の逮捕という国際法規違反のパナマ侵攻の様子
対米協力者の養成機関としては、先述の1946年に米国によりパナマで開校されたアメリカ陸軍米州学校(U.S.ARMY School Of Americas; SOA)が有名であり、1984年に米国内のジョージア州フォートベニング陸軍基地に移転し、2001年の改名後は現在の西半球安全保障協力研究所に該当する。ここだけではなく他にもパナマ米軍基地やコスタリカ米軍基地などCIAの海外協力者の養成機関があり、反対米従属派への拷問技術はCIAの開発指導によることが以下の1998年のニューヨーク・タイムズによるホンジュラスでの米国関与の拷問と暗殺の調査結果に関する証言から分かる。
ホンジュラスの悪名高い残虐な3-16部隊の取調官フロレンス・カバレロは、ニューヨーク・タイムズにこう言った。彼と24人の彼の同僚はテキサスへ連れていかれCIAに訓練された。『彼らは我々に囚人の恐怖と弱点を知る為の心理的方法を教えた。彼を起き上がらせ、彼を眠らせず、彼を裸にしたまま孤立させ、ねずみやゴキブリを彼の独房に置き、悪い食物を彼に与え、動物の死骸を彼に給仕し、冷水を彼に浴びせ、温度を変える。』ここには、彼が言及できていないもう一つの技術があった。それは電気ショックである。
— 3-16部隊の取調官フロレンス・カバレロ[243]
なおCIAによる対米協力者の養成政策の歴史的傾向としては、ナオミ・クラインは70年代以降アメリカの工作員によって好まれたのは彼ら自身が直接の現地での実行者になるのではなく、あくまで海外の現地対米協力者の助言者や訓練者になることであると指摘している[244]。例えば、スハルト政権の経済学者達を養成したインドネシアのフォード基金(en:Ford Foundation)が著名である。
1974年のインドネシアで国家主義者らが自国の経済に対する外国による秘密破壊工作への反乱を起こした。フォード基金は民衆の憤慨の対象となった。その基金は、多くが指摘するように、スハルトの経済学者らを養成しインドネシアのオイルや天然資源を西洋の多国籍企業に売り渡したからである。

外交

日本第二次世界大戦終結後に外交政策の根本的転換を行い、第二次世界大戦以前の覇権主義帝国主義・侵略戦争・軍事介入政策を破棄し、諸外国との相互理解・友好・共生・共栄関係の形成を遂行してきた。それに対しアメリカ合衆国は一貫して覇権主義・帝国主義的で、主として中南米東アジア西アジア侵略戦争軍事介入諜報活動傀儡政権支援などを活発に繰りひろげてきた。特に2003年のイラク戦争では、開戦第一の理由であったイラクの大量破壊兵器は一切見つからず、完全な誤りであったことをジョージ・W・ブッシュ大統領自身が認めた。孫崎享は著書『戦後史の正体 1945-2012』において戦後日本の内政及び外交の本質を分析総括して戦後日本外交は、米国に対する「追随」路線と「自主」路線の戦いと指摘している[246]。また日本の外務省に対しては、孫崎享は、その外交姿勢における対米従属を批判している[247]
孫崎:外務省には、『如何にしてアメリカに取り入るか』ということしか頭にないんです。
2013年11月2日のニューヨーク・タイムズで同盟国たる日本をも経済、外交、技術革新の三分野で盗聴していることがスノーデンの公開文書で発覚したアメリカ国家安全保障局では、具体的に米国の外交的優越性を保持する為のスパイ工作の任務であるK.任務で、中国やロシアと並んで同盟国であるはずの日本もそのスパイ工作対象国のリストに挙げられていることがこれで証明された[249]
(S//SI) K.任務:外交(諸国家及び複数国の機関を含む): 米国の外交的優越性の保持。対象地域:米国の国家安全の利益に影響を著しく与える国家機関及び多国籍機関の地位、目的、プログラム、そして行動:中国、ロシア、フランス、ドイツ、日本、イラン、イスラエル、サウジアラビア、北朝鮮、アフガニスタン、イラク、国連、ベネズエラ、シリア、トルコ、メキシコ、韓国、インド、そしてパキスタン。 受容可能なリスク:台湾
— アメリカ国家安全保障局『文書のみせる米国の敵国及び同盟国をスパイするN.S.A.の努力』より[250]
また外交問題における対米従属批判の立場から、政治経済学者の植草一秀は対米関係に対して反米ではなく、米国内の多様な見解との間で外交的発展を計ることが必要だと指摘する[251]
米国という一つの考えがあるわけではなく、米国の中にも、日本と同じように多様な意見がありますからね。すぐに嫌米とか反米とか、対米自立とかいう話になりますが、米国の中でも良質な意見を述べる人達とうまく結びついて、外交を展開する必要があります。
— 植草一秀『鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ)』[252]

対パレスチナ政策

日本は第二次世界大戦終結後は政府も民間もパレスチナアラブ諸国と友好関係を継続してきた[253]
アメリカ合衆国政府は1947年11月のパレスチナ分割決議、1948年5月のイスラエル建国と国連への加盟を支援し、1948年の第一次中東戦争、1956年の第二次中東戦争、1967年の第三次中東戦争の結果、イスラエルがヨルダン川西岸地区エルサレムガザ地区シナイ半島ゴラン高原を占領し、占領地として統治することを正当化してきた。その後の歴代のアメリカ合衆国政府は、1956年にシナイ半島のエジプトへの返還とイスラエル軍の撤退、1978年9月のキャンプ・デービッド合意と1979年3月のエジプト・イスラエル平和条約、1982年にシナイ半島のエジプトへの返還、1992年に中東和平マドリッド会議を開催し、1994年10月のイスラエル・ヨルダン平和条約を仲介したが、1947年のパレスチナ分割、1948年のイスラエル建国以来、歴代のアメリカ合衆国議会・政府は、イスラエルの存続を優先する立場に基づいてパレスチナ問題を解決する政策を遂行している。
日本政治研究の第一人者である政治学者のカレル・ヴァン・ウォルフレンは、孫崎享との対談で、70年代の日本の対パレスチナ外交を総括してこう述べている。 [254]
ウォルフレン: 70年代の外務省には気概を持った人も確かに多かった。政策面でもアメリカとは一線を画していましたよ。孫崎:そうなんです。第二次オイル・ショック最中の1981年には、外務省はアラファトパレスチナ解放機構(PLO)議長(1996年から2004年までパレスチナ初代大統領)の初来日も実現させました。アメリカがイスラエルとの関係に気を遣い、パレスチナと距離を置いていた頃の話です。アラファト来日が象徴するように、当時の日本は、アメリカに完全に追従していたわけではなかった。だから私のような自主独立派であっても、外務省に居場所があったのです。

対キューバ政策

日本は第二次世界大戦終結後は政府も民間もキューバと友好関係を継続してきた。キューバミサイル危機の時、アメリカ合衆国政府は日本政府に対してキューバに対する国交断絶を要求したが日本政府は拒否した[255]
アメリカ合衆国は1902年にキューバが独立した後も傀儡政権を背後から操ってキューバを間接支配してきたが、1959年のキューバ革命で傀儡政権が打倒され革命政府が樹立された。カストロ政権はバチスタ政権時代の従属的関係から対等互恵の国家関係の形成を求めたが、アメリカ合衆国政府はカストロ政権の要求を拒否して1961年1月にキューバと国交断絶した。
アメリカ合衆国政府は、カストロ政権を打倒し傀儡政権を再樹立し間接支配を復活するために、亡命キューバ人に武器と資金を供給して軍事訓練を行い、1961年4月に亡命キューバ人武装勢力をキューバに侵攻させたが作戦は失敗し、1961年4月にキューバに経済制裁・貿易封鎖を実行した。アメリカ合衆国政府はその後も1962年10月までキューバに対して武力行使を繰り返したがカストロ政権を打倒できず、アメリカ合衆国政府に政権を打倒されると危機を感じたカストロはソ連に支援を求め、1962年10月にキューバミサイル危機が発生し、米ソ核戦争の危機になったがソ連が譲歩してミサイル基地の撤去に応じて戦争は回避された。アメリカ合衆国政府はその後もカストロ政権転覆工作やカストロ暗殺工作を繰り返し、政権転覆や暗殺を恐れたカストロが、キューバと自分を守るために、ケネディ大統領暗殺作戦を遂行したと推測されている[233]
上述のケネディ政権と軍部による一連のキューバ侵攻時の謀略計画機密文書が2001年4月30日にジョージ・ワシントン大学公文書館のサイトで公開された。これにより、米国軍部による他国への政権転覆、軍事紛争誘発への謀略の実態が証明されたのである。孫崎享は、米国の謀略の存在に関しこう指摘している。
......米国はできるだけ、農水省や経産省といった省にではなく、首相の下に諮問機関を作らせ、そこに権限を集中させようとします。そうすれば圧力をかける手間が少なくてすむからです。こうした事実を現場で実際に体験していないと、「それは陰謀論だろう」などと安易に言ってしまう事になります。しかし、少しでも歴史の勉強をすると、国際政治のかなりの部分が謀略によって動いていることが分かります。日本も戦前、中国大陸では数々の謀略をしかけていますし、米国もベトナム戦争でトンキン湾事件という謀略をしかけ、北爆[北ベトナムへの空爆]の口実としたことがあきらかになっています。もっとひどい例としては、米国の軍部がケネディ政権時代、「自国の船」を撃沈するなど、偽のテロ活動を行って、それを理由にキューバへ侵攻する計画を却下したので実行はされませんでしたが、当時の参謀本部議長のサインが入った関連文書を、ジョージ・ワシントン大学公文書館のサイト([256])でみることができます。学者や評論家がそうした事実を知らないまま国際政治を語っているのは、おそらく日本だけでしょう。[257]
— 孫崎享『戦後史の正体』
2010年現在も、歴代のアメリカ合衆国議会と政府はキューバに対して国交断絶・経済制裁を遂行している[258]。 国連総会は1992年 - 2007年の16年連続で、アメリカ合衆国のキューバに対する経済制裁の終結を求める決議を、日本も含めて賛成多数で毎年採択しているが、アメリカ合衆国は毎年反対投票している。2007年度は賛成は184か国、反対は4か国(アメリカ合衆国、イスラエル、マーシャル諸島、パラオ)、棄権は1か国(ミクロネシア)で採択された[259]

対ベトナム政策

日本は第二次世界大戦中はベトナムを侵略し、明号作戦で1945年3月9日にフランスを敗りフランス領インドシナを解体した。第二次世界大戦終結後はベトナムと友好関係を確立し、1959年に南ベトナム、1973年に北ベトナム、ベトナム戦争が終結した翌年の1976年以後は統一ベトナムと外交関係を維持してきた[260]
1954年にベトナム独立戦争が終結した後、ベトナムへの影響力を喪失した旧宗主国のフランスに代わり、アメリカ合衆国政府は南ベトナムに傀儡政権を樹立して背後から操って間接支配を続けた。1960年にアメリカ合衆国の傀儡政権を打倒しベトナム人自身による統治を求める南ベトナム解放民族戦線が南ベトナム政府軍に対する民族独立の武力闘争を開始した。1961年にアメリカ合衆国政府は南ベトナムにアメリカ合衆国軍を派遣し、傀儡政権である南ベトナム政府を支援して、ベトナム戦争への軍事介入、南ベトナム解放戦線に対する掃討戦を開始した。1965年にアメリカ合衆国政府は北ベトナムに戦線を拡大し、ベトナムのみでなくベトコンが潜伏していたラオスやカンボジアも同時期に大規模爆撃した。CIAは、秘密戦争をタイ、ラオス、カンボジアで開始していた。中でも、米国内で秘密にされた米軍によるロン・ノル政権支援の為のカンボジアへの大爆撃は、この一国に対してだけで第二次世界大戦での日本への爆撃総規模の三倍に達していた事も判明している。結局カンボジアの死者は60万人、ラオスでの米軍爆撃では35万人もの市民が殺害された。東南アジア専門のジャーナリスト山田寛は、ベトナム戦争期のカンボジアへの米軍の内戦介入の大爆撃がポルポト政権樹立というブローバック(en:Blowback_(intelligence))となった背景に関してこう述べている[261]
ロン・ノル政権最大の頼りは米軍の爆撃だった。米国防省が発表した73年7月に公表したところでは、米軍は内戦開始の前年の69年3月から、カンボジア領内のベトナム共産軍の聖域に激しい秘密爆撃を行っていた。爆撃は、インドシナ軍事介入にうんざりした米議会がニクソン大統領の手を縛り、73年8月15日で停止されたが、4年5カ月の間にカンボジアに降り注いだ爆弾総量は、54万トン。第二次世界大戦中に日本に投下された量の3倍である。うち26万トンは、73年2月からの半年間に集中した。この半年の爆撃はそれ以前とは異なり、ロン・ノル政府軍支援のためだった。[262]
— 山田寛
米軍は北ベトナム軍と南ベトナム解放戦線との戦争を拡大したが、南ベトナム解放戦線を打倒することは出来なかった。1973年1月にアメリカ合衆国政府は北ベトナム政府、南ベトナム解放戦線と和平協定を締結し、1973年3月にベトナムから敗退した。1975年4月に北ベトナム軍と南ベトナム民族解放戦線軍は南ベトナム政府を打倒し、1976年7月にベトナム統一国家が樹立された。これは戦争において連戦連勝だったアメリカ合衆国が相手を屈服させられなかった史上初の例である。ベトナム戦争は、米国が戦後謀略により仕掛けてきた典型的な戦争の事例であり、日本の政治経済学者の植草一秀は、米国の謀略による捏造事件であるトンキン湾事件を引き合いに出して尖閣問題でもこの種の謀略の危険性がある事を警告しつつこう分析している。[263]
1964年に本格化したベトナム戦争。その引き金を引いたのは、同年8月2日に米軍が北ベトナムから攻撃を受けたという情報でした。この情報を受けてジョンソン大統領が北ベトナムへの報復攻撃を命令し、ベトナム戦争が泥沼化していきました。しかし、後にこの事実が覆されます。1971年にニューヨーク・タイムズ紙が驚くべき真相を明らかにしたのです。その真相とは、米国側が戦線の行き詰まりを打破するために、意図的にトンキン湾に軍艦を侵入させて、北ベトナムの攻撃を誘発した、というものです。米国の謀略に依ってベトナム戦争拡大が誘導されたのです。[264]
— 植草一秀『アベノリスク 日本を融解させる7つの大罪』
ベトナム戦争時、沖縄の在日米軍基地は米国によるベトナム及びインドシナ半島爆撃の主要な軍事的拠点となったことがチャルマーズ・ジョンソンによる研究で判明している。[265]
1965年、米国高官、米太平洋軍司令官グラント・シャープは米国は沖縄基地無しではベトナム戦争を戦えないと言明した。
その後、アメリカ合衆国とベトナムは国交も経済交流も断絶していたが、1995年7月にアメリカ合衆国政府は、ベトナムと国交を樹立した。

対イラン政策

日本は第二次世界大戦終結後は政府も民間も、2010年時点で86%の原油を依存する日本にとって中東の最重要国家であり(米国は5%しか依存していない)、親日国家の一つ[267]とされるイランと友好関係を継続してきた。2006年度まで日本はイランの最大の輸出相手国だったが、中国がイランからの石油輸入を急激に増大しているので、2007年度以後はイランの最大の輸出相手国は日本を追い抜いた中国になったが、日本とイランが友好国であり重要な貿易相手国である状態は継続している[268][269][270]。2011年12月に米国は、国防権限法NDAAを可決し、イランと取引のある外国銀行は米国の銀行との取引が禁止された[271]。こうした西側の制裁と米国の日本への圧力下で、2012年の日本の対イラン石油輸入量削減幅は、過去最大の40%減の日量18万9076バレルとなった。[272]
アメリカ合衆国政府はイラン国民自身によるイランの統治を追求したモサデグ政権を、アメリカ合衆国に協力する勢力を背後から支援して1953年に打倒し、パーレビ王政を支援してきたが、1979年のイスラム革命でパーレビ王政は打倒され革命政権が樹立された。革命政府がパーレビ王政時代の従属的関係から対等互恵の国家関係の形成、パーレビが私物化した財産の返還、パーレビの身柄引渡しを求めたが、アメリカ合衆国政府はイスラム革命政権の要求を拒否してイランの在米資産を接収し、イランに国交断絶と経済制裁を行った。その後も2013年現在に至るまで、アメリカ合衆国の歴代の議会と政府はイランをテロ支援国家と認定して、核保有国の核使用独占体制であるNPT体制下での核査察、国交断絶や経済制裁を遂行している。そんな中、2003年以降のイランは核開発疑惑がもたれるようになり、米国主導の西側諸国、例えばイスラエルなどからも激しい制裁を受け続けている。
日本は、曾ては原油の総輸入量の10%以上をイランに依存して来たが、現在では米国の要請で大幅に減退させた。さらに、日本とイランは独自に共同で、中東最大級のイランのアザデガン油田共同開発プロジェクトを推進してきたが、日本は米国の圧力でこの事業から完全撤退させられた。その結果、アザデガン油田の巨大利権は中国が獲得する形となった[273]。これに関連して、孫崎享はイラン大使経験者としてイラン側の観点を通して日米外交観を、イラン元大統領ハーシェミー・ラフサンジャーニーの言葉を引用しながらこう分析している。
私はハタミの前任者であるハーシェミー・ラフサンジャーニー(イラン大統領。任期は1989-97)にこう言われたことがあるんです。『アメリカは馬鹿だ。日本に圧力をかければ、漁夫の利を得るのは中国とロシアだけだ。アメリカと対立する中国とロシアの立場を強くし、逆に同盟国である日本の立場を弱めてどうするのか』と。全くその通りだと思います。アメリカの外交とは、強力な軍事力を背景にしたものです。だけど、それだけですべてがうまくいくわけではない。日本が得意としてきた平和的な国際協力によってこそ解決していく物事もあるわけです。そうした日本独自の外交は、長期的にはアメリカにも利益をもたらします。本来であれば、日本を後押しすべきなのに、アメリカはそこを理解していません[274]
— 孫崎享『独立の思考』
また元米国司法長官ラムゼー・クラークは、米国のイラン・イラク戦争における外交の裏側から米国の対外政策全般の本質を指摘している[275]
イラン・イラク戦争では何百万という若者が命を落とした。この8年戦争が始まった時ヘンリー・キッシンジャーはこう言った。『彼らが互いに殺し合ってしまえばいい。』これはまさしくアメリカの方針だった。両国が殺し合ってくれれば、それに超したことはない。そうすればあの地域のことは心配しなくていいからね。まさにこれが我が国の政策なのだ。
— ラムゼー・クラーク

対シリア政策

日本は1953年にシリアと国交を樹立して以後は政府も民間もシリアと友好関係を継続してきた。
アメリカ合衆国はシリアが1990年の湾岸戦争で多国籍軍に参加し、1991年にアメリカ合衆国政府が主催した中途和平マドリッド会議以後、アメリカ合衆国政府が提案する中東和平プロセスを支持し、アメリカ合衆国政府が主導した国連安保理決議に基づいて2005年にレバノンから軍を撤退させたが、アメリカ合衆国政府はシリアがレバノンに軍を進駐させた1976年当時からシリアをテロ支援国家と認定し、2004年以後は経済制裁を実施し、2005年以後は在シリア大使を帰国させている[276]
2013年9月5日に米国の上院外交委員会はシリアの化学兵器使用を理由に軍事行動を承認したが、議会承認なきまま米軍はシリア侵攻の攻撃態勢に入っていた[277][278][279]。しかし、同年9月9日にプーチン政権は米国によるシリア侵攻を回避するべくロシアセルゲイ・ラブロフ外相を通してシリアの化学兵器を国際管理下に置き、シリアの化学兵器禁止条約批准を提案した[280]。そして、9月12日にシリアのアサド大統領はさらに批准後の一ヶ月後に化学兵器情報を提供することにも同意し[281]、9月13日には米国オバマ政権とロシアのプーチン政権がこのロシア案に合意し、シリア戦争は回避された[282]。9月27日の国際連合安全保障理事会によるシリアの化学兵器廃棄のための安保理決議案により化学兵器禁止機関による査察が同30日から開始し[283]、シリアが化学兵器禁止条約の正式な加盟国に10月14日よりなった[284]。そして、10月31日、化学兵器禁止機関は、シリア国内の化学兵器生産施設の廃棄が完了し、シリア戦争は完全に回避された[285]。 このシリア戦争の危機に際し、安倍政権は米国のシリア侵攻に反対を表明せず、石破茂自民党幹事長はシリア側の化学兵器使用の確証ないままに「(米国から)説明を受け、国民に説明できるのであれば時を置かずに支持することが必要だ。」と発言し[286]、菅官房長官は8月29日の記者会見で、シリア政府による化学兵器を使用の根拠を問われ「さまざまな具体的情報があるが、関係国とのやり取りなので控える」と米国側の根拠が依然国民に不明となる曖昧な態度表明の上で、尚シリアの化学兵器使用を非難している[287]。このようにシリア戦争の危機に際しても日本政府は基本的に対米追随の立場を採ったのである。 日本の政治経済学者の植草一秀は、第二次世界大戦から現在までの米国の対外侵略戦争の歴史的系譜を分析して、しばしば米国と同一視される軍産複合体のシリア戦争計画挫折の意義をこう総括している。
米国において、戦争は必然に依って発生していない。必然ではなく人為によって発生している。第二次世界大戦終了以降、朝鮮戦争ベトナム戦争中東戦争、湾岸紛争、湾岸戦争アフガン戦争イラク戦争と10年ないし15年に一度、巨大戦争が仕掛けられて来た。2003年にイラク戦争が行われてから、すでに10年の時間が経過した。米国の軍産複合体は、ある程度の規模の戦争が創作されなければ、維持不能である。2013年のシリア攻撃のプランは、この事情によって創作されたものだと思われる。しかし、米国の思惑は封殺されてしまった。イラク戦争の教訓を踏まえて賢明になった国際世論が米国の暴走を食い止めた。米国の軍産複合体が切望する戦争実現が阻止された。この為、米国は2014年に新たな戦争を創作しようとするだろう。有力候補地は引き続き中東である[288]
— 植草一秀『日本経済撃墜 -恐怖の政策逆噴射』

対リビア政策

日本は1957年にリビアと国交を樹立して以後は政府も民間もリビアと友好関係を継続してきた。 1969年9月1日、ムアンマル・アル=カッザーフィー(カダフィ)と同志の青年将校たちによるクーデターにより、トルコに滞在中だった国王イドリース1世は退位し、カダフィを事実上の元首とする直接民主制の共和国が成立した。同国はカダフィが著した『緑の書』に基づく独自の社会主義国家を建設を目指し、対外的にはソビエト連邦に援助を受け、国民の5分の1を公務員としカッザーファ族同族による独裁的支配を実施したが、それ以前の王政による腐敗した権力を打倒し、石油産業を国有化し経済を発展させ、その利益を国民に還元し、教育や女性解放運動に注力し、リビアをアフリカでも豊かな国の一つにし、部族間対立を押さえ40年以上も統治してきた。しかしアメリカ合衆国の1986年のリビア爆撃以後、リビアはその報復として1988年にパンナム機を爆破(パンアメリカン航空103便爆破事件)した。そして米国はリビアに対して外交関係を停止し、経済制裁を実施してきたが、リビア政府が旅客機爆破事件の被疑者の身柄の引渡しと賠償金の支払いを表明し、大量破壊兵器の破棄を表明したので、2004年に経済制裁を解除し、2006年にテロ支援子国家の指定を解除し外交関係を復活した[289]。米国が反テロ戦争のレトリックの下で惨事便乗型資本主義を実施したアフガン戦争イラク戦争についでNATO(北大西洋条約機構)を利用して軍事介入した2011年リビア内戦では、米国の支持するリビア国民評議会とアフリカ連合の脱ドル支配体制を目指したカダフィ政権側との戦争となった。同年8月23日にはリビア国民評議会軍が首都トリポリを陥落し、同10月20日にはカダフィがスルト(シルト)で射殺され、42年間続いたカダフィ政権は崩壊した。2012年7月7日には、同国の60年ぶりに行われた国民全体会議選挙(定数200)で、120議席が無所属に、80議席が政党に配分された。国民勢力連合が39議席、ムスリム同胞団系の公正建設党が17議席、残りの議席は各中小政党が獲得する形となった。国民評議会は同年8月8日に権限を全体国民会議に移譲し解散した[290]。今後は、選挙によって選ばれた議員で構成された議会に承認された内閣が行政権を継承し、そしてこの議会が制憲議会としてリビアの新憲法を制定し、1年以内の正式政府発足を目指して[291]統治機構を調えることとなる。
しかし、米国の軍事介入へのブローバックは止まず、同年9月11日には米領事館襲撃事件が発生し、J・クリストファー・スティーブンス大使はじめ関係者4人が死亡するなど、アフガンやイラクの先例と同様未だ国内は内戦以来の不安定な情勢が続いている。 同年9月12日、リビア全体国民会議は、ムスタファー・アブーシャーグールを首相に指名したが期限内に組閣を果たせず、首相不信任案を可決し解任。リビア国民評議会時代の暫定首相であるアブドゥルラヒム・アル・キーブが引き続き暫定政権を同年11月14日まで率いた[292]10月14日、国民議会は元外交官のアリー・ゼイダーンを首相に選出した[293]。そして、同年11月14日からは、議会の承認によりアリー・ゼイダーンが現在までのリビア首相を務め政権運営に当たっている。

軍事

核兵器廃絶

核兵器廃絶を推進する諸国(日本も含む)の政府は、過去1994年~2009年の16年連続、国連総会で核兵器廃絶決議を提案し、賛成多数で毎年採択されている。2008年度は59か国が共同提案国になり、賛成は史上最多の173か国、反対は4か国(アメリカ合衆国、インド、朝鮮民主主義人民共和国、イスラエル)、棄権は6か国(中華人民共和国、イラン、ミャンマー、パキスタン、キューバ、ブータン)である[294][295]
2013年10月21日に、日本は「米国の核の傘」にある国として初めて、国連総会第一委員会で125カ国連名の「核兵器の人道上の結末に関する共同声明」(ニュージーランド政府発表により「いかなる状況においても核兵器が再び使用されないこと」という表現を含む)に正式に合意し署名した。また、日本はオーストラリア政府発表の17カ国連名の「核兵器の人道上の結末に関する共同声明」(「核兵器を禁止するだけでは廃絶できない」、「人道の議論と安全保障の議論の両方が重要だ」という表現を含む)にも正式に合意し署名した。[296]

包括的核実験禁止条約

日本は包括的核実験禁止条約[297]に1996年9月に署名、1997年7月に批准している。アメリカ合衆国政府は1996年9月に包括的核実験禁止条約に署名したが、議会上院は軍事的な選択が制限されると認識し、軍事的な選択の多様性を保持する考えで未批准である[298]
2013年9月27日、第8回CTBT発効促進会議が開催された。これは、発効促進のための会議を開催することを定めた第14条2で、発効要件国44か国すべての批准が同条約の発効要件であり、その達成まで隔年で開催することが規定されているためで、現在は署名国183か国,批准国161か国である。発効要件国の中で、米国は署名済みでも、2013年現在未だ未批准である。他には中国,エジプト,イスラエル,イランは署名済み・未批准の状態であり、インド,パキスタン,北朝鮮は未署名、且つ未批准のままである。[299]

対人地雷禁止条約

日本は対人地雷禁止条約[300]に1997年12月に署名、1998年3月に批准している。アメリカ合衆国政府は対人地雷禁止条約は軍事的な選択が制限されると認識し、軍事的な選択の多様性を保持する考えで未署名である[301]
2013年12月27日には、ポーランドが同条約を批准し、加盟国は計161カ国となる。これでEU加盟国の全てが批准し、NATO加盟国では最大の軍事的覇権国米国は、依然加盟せず同条約を国策的に拒否している状態である。さらに、2013年現在、アジア地域に於ける加盟国が少ない事が指摘されている。[302]

クラスター弾に関する条約

日本は2007~2008年に開催されたクラスター爆弾の禁止を求める国際会議において、標的識別機能と自爆機能を持つ形式を例外として、それ以外の形式のクラスター爆弾の開発・製造・保有・移転・使用を禁止し、保有しているクラスター爆弾を8年以内に破棄することを規定した規制案に対して、2008年5月に他の109か国とともに参加国の全会一致で賛成し、採択を成立させた。日本政府は2008年の12月に開催されたクラスター弾に関する条約の署名式で署名し[303]、2009年度の通常国会で批准した[304][305]
パナマ侵攻からイラク戦争に到るまで、クラスター弾を大量に使用して来たアメリカ合衆国は、2013年時点でも依然ロシア、中国、韓国、北朝鮮とともに会議に参加せず、クラスター爆弾の保有継続を表明している。
2010年2月16日には、批准国が30カ国に到達し同条約は同年8月1日に発効した。そして2013年9月10日から13日には、日本も参加したザンビアのルサカにおけるクラスター弾に関する条約(CCM)の第4回締約国会議が予定通り開催され、締約国の更なる拡大策が講じられた。同条約発効以降、2013年9月18日時点で、署名国が111カ国、参加国が84カ国にまで拡大した。[306] [307]

憲法九条

日本は日本国憲法制定後は、憲法が規定する国際平和を追求する政策を遂行し、軍事力は国民と領土・領海・領空の自衛のために限定して保有し、GDPに対する軍事費の比率も1%以内を維持している。アメリカ合衆国議会・政府は日本に対して、自衛目的以外の侵略戦争・軍事介入を容認すように日本国憲法第9条を変え、対外作戦遂行能力を持つ軍事力を保有し、アメリカ合衆国の軍事作戦に協力するよう期待しているが、第二次世界大戦後の歴代の日本の議会と政府は、そのような期待に応じず拒否している。2012年8月15日に、日本の対米従属の既得権勢力を操ってきたリチャード・アーミテージジョセフ・ナイは第三次アーミテージ・レポートで、平和憲法の改正により、集団的自衛権(ちなみに日本は個別的自衛権は行使可)を容認し、イランと米国の係争地であるホルムズ海峡への出撃を日本政府に要請した。[308]
日本の集団的防衛の禁止に関する改変は、その矛盾をはっきりと示すことになるだろう。政策の変更は、統一した指揮ではなく、軍事的により積極的な日本を、もしくは平和憲法の改正を求めるべきである。集団的自衛の禁止は同盟の障害である。[309]
— リチャード・アーミテージジョセフ・ナイ『第3次アーミテージレポート』
なお自民党と公明党の連立政権は、2012年4月27日の自民党発表の日本国憲法改正草案通りに、第九条を改正し、実質的な内閣による独裁体制を成立させる緊急事態条項や、国防軍による秘密の軍事法廷に該当する審判所の設置など軍事国家化への憲法改正を推進していると批判されている。[310]

人権

アメリカ合衆国は米州機構本部国でありながら米州人権条約を批准していない。 2013年11月26日に安倍晋三政権が強行採決した特定秘密保護法は、対米従属政策の一環として、日本の警察国家化、秘密国家化による構造的人権侵害が危惧されている。例えば、日本弁護士連合会(日弁連)の海渡雄一は、特定秘密保護法が国民と議員の知る権利を侵害し、行政による国会の情報統制を可能にし、機密漏洩が未遂も既遂も包括するに止まらず、官僚、議員、ジャーナリストから市民活動参加者までも対象とする現代版治安維持法であると指摘する。2013年現在の日本では、既に米国の圧力で、軍事情報包括保護協定、国家公務員法守秘義務規定、日米刑事特別法、911テロの混乱下で強行採決された自衛隊法改正などの日本側の機密漏洩を厳罰化する法体制は既に成立しているが、どれも法学的な立法事実の証明手続きを経ていないと指摘されている。[311]海渡雄一は、特定秘密保護法の第九条で、特定秘密が外国と共有可能とされている点を問題視し、国民には秘密を厳守させ、外国には秘密を提供するという不公正に関して、その外国とは米国に他ならないと批判する。[312] 

国際刑事裁判所条約

日本は国際刑事裁判所条約[313]に2007年7月に署名・批准した。
アメリカ合衆国政府は2000年12月に同条約に署名したが、議会上院はアメリカ軍軍人が訴追されることを拒否して未批准である。特にジョージ・H・W・ブッシュ政権は2001年、署名を撤回すると表明した[314]。アメリカ合衆国政府は2001年以後、国際刑事裁判所条約の加盟国に対して、アメリカ合衆国軍の軍人を国際刑事裁判所に対して不訴追にする条約の締結を働きかけ、経済的に貧しい国の中には、アメリカ合衆国からの経済援助を受けて、アメリカ合衆国軍の兵士を国際刑事裁判所に対して不訴追にする条約を締結している国もある。日本は経済的に豊かな諸国、国際協調を重視する諸国とともに、アメリカ合衆国軍の軍人を国際刑事裁判所に対して不訴追にする条約の締結を求めるアメリカ合衆国政府からの働きかけを拒否している。
2013年現在、同条約の締約国は日本を含めた世界122カ国にまで拡大してきている。ただし、日本は2010年の改正ローマ規程の侵略犯罪に関する諸条項(第5条、8条、15条)には米国と共に署名していない。[315]

経済的・社会的・文化的権利に関する国際規約

日本は経済的・社会的・文化的権利に関する国際規約に、1978年5月に署名、1979年6月に批准した[316]
2013 年 4 月 29 日から5 月 17 日には、第50会期に関して社会権規約委員会は、日本に対して雇用問題、人権問題、社会保障問題での第三回目の総括所見を提示した。その中で、以下の新たに日本が批准した二点が積極的に評価されている。一つ目は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する同選択議定書であり、二つ目は、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約である。さらに、日本が実施中の四事項(1、アイヌを先住民族として認めたこと。2、中等教育までの授業料無償化プログラムを導入したこと。、「待機児童ゼロ作戦」を実施したこと。2009 年に国籍法を改正し、婚外子が日本人父の国籍を取得できるようにしたこと。)の実施も評価されている。しかし、主要な懸念事項および勧告において、例えば労働問題では、雇用差別の全廃が依然未決の国内問題として厳しく指摘されている。[317]
アメリカ合衆国政府は1977年10月に経済的・社会的・文化的権利に関する国際規約に署名したが、議会上院は国内法が条約に制限されることを拒否して未批准である。

女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約

日本は女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に、1980年7月に署名、1985年6月に批准した[318]
アメリカ合衆国政府は1980年7月に女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約に署名したが、議会上院は国内法が条約に制約されることを拒否して未批准である。なお2013年6月時点で、同条約の署名国は99カ国、締約国は187カ国に達したが、アメリカは現在も依然として未批准の状態にある。 [319]

児童の権利に関する条約

日本は児童の権利に関する条約に、1990年9月に署名、1994年4月に批准した[320]
アメリカ合衆国政府は1995年2月に児童の権利に関する条約に署名したが、議会上院は国内法が条約に制限されることを拒否して未批准である。
なお2013年の時点では、アメリカ合衆国とソマリアと南スーダンの三か国以外の193カ国が締約批准している。[321]

難民の地位に関する条約

日本は難民の地位に関する条約の締約国であるが、難民の受け入れには消極的であり、難民受け入れの実績は少ない[322]
アメリカ合衆国は難民の地位に関する条約の締約国であり、植民者が建国し、移民の受け入れを継続・増大させてきた実績[323]があり、第二次世界大戦時も第二次世界大戦後も難民の受け入れに積極的であり、世界の諸国の中でも主要な難民受入国の一つである。
2013年時点で世界145カ国以上の政府が1951年難民の地位に関する条約(難民条約)に加入しているが、米国では、移民が常時3万人以上刑務所に収容されている。そこでは、犯罪者でもないのに、移民達が拘束服を強制され、看守つきの牢獄生活や、無期限の収容と、法外な収容費用を苛酷に強いられていることが、2009年3月25日発表のアムネスティ報告書「正義なき投獄」は既に伝えている[324]

死刑

日米両国は死刑制度の存在・実施国(2009年現在、アメリカ合衆国は連邦・軍・36州の法律に死刑が有り、15州・1特別区・2自治領の法律に死刑は無い)である。
日本では死刑廃止の意見が国民と国会議員の間で多数派となっていないが、1990~1992年は死刑を執行しなかった。
アメリカ合衆国では1972年に連邦最高裁が死刑はアメリカ合州国憲法[325][326]の修正第8条に反する違憲であると判断して、全米で死刑の執行が停止され、1976年に連邦最高裁が死刑は合憲と判断を変更し、1977年に死刑執行が再開されるまで死刑は執行されなかった。1979年以後は毎年死刑を執行[327]している。
2013年時点で、5月31日に国連の拷問禁止委員会は、「死刑を廃止する可能性を検討すること」という総括所見を発表し死刑廃止を強く勧告した。これは、2007年における同委員会の対日勧告以来二度目であるが、自民党及び公明党連立政権は死刑廃止論の論議自体を依然検討していない。現在では、世界140カ国が死刑制度を廃止したが、2012年ではまだ21カ国が死刑を執行した。G8の中で米国と日本だけが死刑執行国である。なお米国では、既に18州が死刑制度を廃止し、死刑を執行したのは9州だけである [328]

環境

生物多様性条約

日本は生物多様性条約[329]、1992年6月に署名し、1993年5月に批准した。
アメリカ合衆国政府は1993年6月に生物多様性条約に署名したが、議会上院はアメリカ合衆国のバイオテクノロジー企業の特許権やその他の知的所有権の利益が制限されると認識し、アメリカ合衆国のバイオテクノロジー企業の国際競争力の覇権主義的な競争優位を守るという考えで未批准である[330]
2012年10月8日から10月19日の期間には生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)が、インドで開催され生物多様性条約(CBD)の実行について190カ国以上が議論に参加した。2010年のCOP10の議長国だった日本は、2012年9月28日に閣議決定された「生物多様性国家戦略2012-2020」に基づき2020年までに、生物多様性の損失を食い止めるための緊急かつ効果的な行動をとることが合意された愛知目標実現の為の新戦略が、同目標の為に自国の既存の戦略を見直した14カ国と地域のうち、インドネシア、ガイアナ共和国やEUによって実施されることを確認している。[331]

京都議定書

日本は温暖化対策のための気候変動枠組条約の下部規定である京都議定書[332]、に1998年4月に署名し、2002年6月に批准した。
アメリカ合衆国政府は1998年12月に京都議定書に署名したが議会上院はアメリカ合衆国の企業の経営や利益が制限されると認識して未批准である。アメリカ合衆国政府は2001年に京都議定書への署名を撤回すると表明した。日本は京都議定書以後の温暖化予防の国際的な政策連携に中国やアメリカ合衆国の参加を促すため、議会・政府間の交渉および民間レベルで働きかけをおこなっている。
2013年10月9日には、EUが1990年比での8%の削減目標を超過達成が発表されたが、日本は逆に2011年には1990年比で3.7%増加している。また2012年誕生の安倍晋三政権は、2020年までの削減目標を1990年比で25%削減する目標をゼロベースで見直すと決定して市民団体から批判されている。 [333]

捕鯨

日本は商業捕鯨の再開と調査捕鯨の継続を主張している。
アメリカ合衆国は過去には商業捕鯨実施国だったが、1972年以後は国際捕鯨委員会の捕鯨反対の主要国として、商業捕鯨の再開反対・禁止継続と調査捕鯨の制限を主張している。
2014年1月に日本の国策としての調査捕鯨が例年通り南極で始まったが、反捕鯨団体シー・シェパードの妨害や抗議行為に苦悩している[334]。日本は国際捕鯨委員会(IWC)の決議に従い1987年に商業捕鯨を停止したが、調査捕鯨は、現在でも水産庁所管財団法人の「日本鯨類研究所(鯨研)」のもとで年間45億から50億円規模の予算で例年二回、12月から翌年3月に南極海、6月から9月に北西太平洋で実施している。そして、その調査費は日本鯨類研究所が、解凍後の鯨肉販売で賄っている。ただし、日本側の問題点としては2011年、反捕鯨団体シー・シェパードの妨害行為で生じた赤字11億3306億円を補填するため、農林水産省が東日本大震災による2011年度復興予算にそのための約23億円を計上したこと、IWCが一応加盟国に認めている調査捕鯨と鯨肉販売を行っているのは日本だけであることが批判されている。[335]

日本の対外経済関係

日本の対外経済関係がアメリカ合衆国に対して過剰な依存をしているという認識は、日本政府が公開している対外経済統計と国際機関(国連、国際通貨基金、世界銀行など)が公開している世界の経済統計を参照する限りには事実ではなく誤認であると言うこともできる。
2008年の為替レートベースの世界のGDPは60兆6869億USドル[336]、アメリカ合衆国のGDPは14兆2646億USドル[337]で世界シェアは23.5%、日本のGDPは4兆9237億USドル[338]で世界シェアは8.1%、世界のGDPから日本のGDPを除いたGDPに対するアメリカ合衆国のGDPのシェアは25.5%である。
1990~2008年の間に日本の輸出に対するアメリカ合衆国のシェアは31.5%から17.6%に減少、中国のシェアは2.1%から16.0%に増大、輸入に対するアメリカ合衆国のシェアは22.3%から10.2%に減少、中国のシェアは5.1%から18.8%に増大した[339]。1990~2008年の間に日本の輸出に対する北米のシェアは33.8%から18.9%に減少、アジアのシェアは31.1%から49.3%に増大、輸入に対する北米のシェアは26.1%から11.9%に減少、アジアのシェアは28.7%から40.6%に増大した。 2008年の日本の輸出・輸入に対するアメリカ合衆国のシェアは、2008年の世界のGDPから日本のGDPを除いたアメリカ合衆国のGDPのシェアである25.5%より低いので、あくまでも世界の経済統計おける政府の長期対外債務残高のGDP比上では、日本の対外経済関係はアメリカ合衆国に対して過剰な依存はしていない[340]
2013年5月に日本銀行国際局が発表した日本の『2012年末の本邦対外資産負債残高』によれば、2012年度末までの日本の対外資産296.3兆円にのぼり、負債残高は49.5兆円増加である[341]。また同報告によれば、日本対外純資産は、対外資産負債残高が発表されている主要国の中では中国の同年度の150.3兆円を超えて世界最高額である[342]
進藤栄一は、自著『アジア力の世紀――どう生き抜くのか』において、日本貿易の対米依存度の減少と対アジア貿易依存度の増加傾向を指摘し以下の如く総括している[343]
いまや、米国覇権体制下でのアメリッポンの道も、新脱亜入欧論の道もありえない。代わりに見えてくるのは、欧米中心世界の終焉である。アジアNIESからBRICSを経て、G20からG0に到る大アジア力の世紀の到来である。そして総体としてのアジアの力が生む巨大な市場と豊富な人材が、一日経済圏の形をとって私たちの眼前に立ち現れている。それが、日本の貿易における、対米依存度の急激な縮小と、対中国、対アジア貿易依存度の急増に示される。日本の対外輸出における対米輸出比率は、70年代から80年代にかけて40%近く(86年38.5%)にまで達した。その後漸減し始め、2010年には13.3%に縮小し、減少はなおも続いている。逆に対中輸出は、70年代の1%以下から10年の21.2%へと、30年間で20倍以上も増加し、日本の対アジア輸出全体では54.1%にまで達していた。疑いもなく日本経済は、総体としてのアジアへの輸出依存度を高め、興隆するアジア経済との一体化の動きをさらに強めている[344]
— 進藤栄一『アジア力の世紀――どう生き抜くのか』

アメリカ合衆国の債券発行残高と日本の保有率

2008年6月時点のアメリカ合衆国の債券の発行残高と日本の保有率は次に記載するとおりである[345]
財務省の長期債券(米国債)発行残高は2兆2106億5900万ドルで、そのうち、日本の保有額は5681億5900万ドルでシェアは25.7%、中国の保有額は5219億1200万ドルでシェアは23.6%である。
政府機関の長期債券(公債)発行残高は1兆4636億8600万ドルで、そのうち、日本の保有額は2696億2400万ドルでシェアは18.4%、中国の保有額は5270億5300万ドルでシェアは36.0%である。
企業の長期債権発行残高は2兆8196億8600万ドルで、そのうち、日本の保有額は1483億8600万ドルでシェアは5.3%である、中国の保有額は262億8500万ドルでシェアは0.9%である。
財務省と政府機関と企業の長期債券発行残高の合計は6兆4940億3100万ドルで、そのうち、日本の保有額は9861億6800万ドルでシェアは15.2%、中国の保有額は1兆0752億5000万ドルでシェアは16.6%である。
企業の株式発行残高は2兆9692億8800万ドルで、そのうち、日本の保有額は1986億4500万ドルでシェアは6.7%、中国の保有額は995億4800万ドルでシェアは3.4%である。
財務省と政府機関と企業の長期債券発行残高と企業の株式発行残高の合計は9兆4633億1900万ドルで、そのうち、日本の保有額は1兆1848億1300万ドルでシェアは12.5%、中国の保有額は1兆1747億9800万ドルでシェアは12.4%である。
財務省と政府機関と企業の長期+短期の債券発行残高と企業の株式発行残高の合計は10兆3217億4900万ドルで、そのうち、日本の保有額は1兆2504億1500万ドルでシェアは12.5%、中国の保有額は1兆2050億8000万ドルでシェアは11.7%である。
日本がアメリカ合衆国の債券を過剰に購入・保有しているという認識は、アメリカ合衆国政府機関が公開している債券保有者統計と国際機関(国連、国際通貨基金、世界銀行など)が公開している世界の経済統計を参照する限りには事実ではなく誤認であると言うこともできる。2008年6月30日現在のアメリカ合衆国の長期+短期の債券発行残高に対する日本の保有率12.5%は、2008年度の世界のGDPからアメリカ合衆国のGDPを除いたGDPに対する日本のGDPのシェアである10.6%と比較すると1.9%大きいが近似値である。2008年6月30日現在のアメリカ合衆国の長期+短期の債券発行残高に対する中国の保有率11.7%は、2008年度の世界のGDPからアメリカ合衆国のGDPを除いたGDPに対する中国のGDP[346]のシェアである9.5%と比較すると2.2%大きいが近似値である。2008年度の為替レートベースのGDPが世界で2位の日本や3位の中国は、自国の経済力以上にアメリカ合衆国の長期+短期の債券を過剰に保有しているのではなく、自国の経済力のシェアに応じて債権を保有していると見ることもできる。
2013年9月17日に、米国財務省は国際資本統計を発表して日本の米国債保有総額は2000年代以降の最高保有額の1兆1354億ドル(約112兆円)を記録した。それに対して、米国国債保有総額が依然世界首位の中国は1兆2773億ドルであった[347]

アメリカ合衆国に経済的に収奪されるとの意見

対米従属に反対する人々(例えば鳩山由紀夫、 孫崎享、 植草一秀、前泊博盛など)の中には、日本とアメリカ合衆国との経済関係は、日本がアメリカ合衆国に一方的に搾取され収奪される関係であると認識している人が存在し、その具体的な事例として、アメリカ合衆国政府が日本政府に対して要求している、日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく、日本国政府への米国政府要望書(通称は年次改革要望書)で日本から搾取収奪するための政策を日本政府に強要し、その具体的な事例として、日本国民の郵便貯金をアメリカ合衆国の金融機関が搾取収奪する手段として郵政民営化をしようとしていると指摘し、反対している[348]
先進国と先進国の経済関係においては、個々の国の全ての産業と主要な企業の国際競争力が、どちらか一国がもう一国と比較して一方的な強弱の関係ではなく、個々の国の個々の産業と主要な企業ごとに強弱・優劣があるので、どちらか一国がもう一国に対して一方的に収奪することは難しい。先進国と開発途上国の関係においては、冷戦時代の開発途上国の中にはアメリカ合衆国が傀儡政権を操って間接支配していた国があり、そのような国では一方的な収奪が行なわれていた[349]

アメリカ合衆国の企業が日本の企業・事業を買収した事例

日本の企業がアメリカ合衆国の企業・事業を買収した事例

米軍に対する意見

日本がアメリカ合衆国と軍事同盟を締結し、アメリカ軍に基地を提供し、 在日米軍の存在を容認していること、また思いやり予算で管理費用を負担し、その行動を“特例法”で国内法の適用対象外としていることは対米従属であるとの意見を持っている人々(例えば、対米従属批判の代表的論客である鳩山由紀夫、 孫崎享、 植草一秀、前泊博盛など)が多く存在する(琉球新報社説で“対米卑屈”と喝破した[355])。
また日本とアメリカの軍事同盟締結のアメリカ合衆国側の事情としては、
  • 日本が核攻撃を受けても、アメリカ自身が核攻撃される危険を犯してまで報復核攻撃はしないと、ヘンリー・キッシンジャーなどの複数の米国政府元要人や学者が述べている。
  • 自由民主主義社会・資本主義国家の主導国として、冷戦に勝利することを追求していた。
  • 冷戦に勝利するためには多種多様な分野で有力な同盟国ができるだけ多く必要だった。
  • 日本は政治・軍事・経済・産業・科学・技術、その他の多種多様な分野で有力な同盟相手国だった。
  • 日本はソ連領、中国領の東岸の列島が領土・領海であり、ソ連と中国を牽制する地政学上の要所である。
といったことがあった。
だが、もし日本、アメリカ合衆国、ロシア、中国、世界の情勢が変化し、日米両国の国民や議会の多数意見が、日米の軍事同盟は必要ないとの認識に変わるなら、日米の少なくともどちらか一方が日米安全保障条約の破棄を通告すれば、日米安全保障条約は1年後に解消される[356]
フィリピンの米軍基地はフィリピン政府の都合で1992年に閉鎖になり、アイスランドの米軍基地はアメリカ合衆国政府の都合で2006年に閉鎖になったように、日本とアメリカ合衆国の軍事同盟が永久に続く根拠はない[357]

自衛隊の国外派遣

自衛隊海外派遣は1991年にペルシャ湾に機雷の掃海に派遣されて以来、復興支援活動、国際連合平和維持活動、難民救援活動、国際緊急援助活動、海上警備行動に基づく海賊対策などの目的で国外派遣の実績を積み重ねてきた。自衛隊イラク派遣では死傷者が出るかと懸念されたが、自衛隊は派遣されていた2年6か月の間にイラク国民を一人も死傷させず、一発の弾も撃たないで帰国できた。一方イラクに駐留している米軍には死亡者や負傷者が多数発生している。孫崎享は、日本の対米従属の軍事史における米国による自衛隊の海外派遣の要求への変遷を分析して指摘している[358]
日米の軍事関係には、二つの形があります。一つは、米国が在日米軍を使うという形。もう一つは、米国が自衛隊を自分の戦争に使うという形です。事実自衛隊の発足のときに、米国は朝鮮戦争に自衛隊を使おうとしました。しかしどちらの時も、憲法九条があるので海外に自衛隊を派遣するのは無理だと日本側が抵抗して実現しませんでした。基本的に対米追随をとった日本の保守本流路線ですが、自衛隊の海外派遣だけは長らく拒否しつづけてきたのです。一方、ソ連との戦いのなかでは、もともと自衛隊を使うのは無理でした。米国とソ連の戦いは核兵器を巡る戦いだからです。ところが、1970年代末から1980年代始めにかけて、米ソの戦いの中で、米国が日本の自衛隊を使いたいと考える場面がでてきたのです。
— 孫崎享『戦後史の正体 1945-2012』[359]

関連文献

関連映像

  • ナオミ・クライン原作、マイケル・ウィンターボトム、マット・ホワイトクロス監督『DVD BOOK ショック・ドクトリン (旬報社DVD BOOK) [DVD-ROM]』(旬報社、2013年)[362]
  • バーバラ・トレント監督『パナマ詐欺』(ビデオ邦題:『嘘まみれのパナマ戦争』、en:The Panama Deception、New Video Group、1993年米国アカデミー賞長編記録映画賞受賞)[363]
  • パトリシオ・ガズマン監督『チリの戦い』(en:The Battle of Chile、チリ、1975-79年)[364]
  • エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ監督『誰も知らない基地のこと』(原題:en:Standing Army、Effendemfilm and Takae Films、イタリア、 紀伊國屋書店、2012年)[365]
  • フランク・ドリル編集『テロリストは誰?』DVD版 (グローバルピースキャンペーン、2004年)[366]
  • オリバー・ストーン『サルバドル/遙かなる日々』DVD (20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン、2007年)[367]
  • オリバー・ストーン『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』DVD-BOX (角川書店、2013年)[368]
  • マイケル・ムーア『華氏 911 』DVD (ジェネオン エンタテインメント、2004年)[369]
  • マイケル・ムーア『キャピタリズム~マネーは踊る』DVD (ジェネオン・ユニバーサル、2010年)[370]
  • チャールズ・ファーガソン『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』DVD (ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、2012年)[371]

関連項目

外部リンク

脚注

  1. ^ 対米従属の英語用例参考。presstv. “Canada’s slavish obedience to US, Israel”. 2014年1月17日閲覧。
  2. ^ 対米従属の英語用例参考。Cavan McCormack title = Client State: Japan in the American Embrace, Verso, 2007, p.3.
  3. ^ 対米従属の英語用例参考。nytimes. “Latin American Allies of U.S.: Docile and Reliable No Longer”. 2014年1月17日閲覧。
  4. ^ 孫崎享アメリカに潰された政治家たち」小学館、2012年、P.15。
  5. ^ 孫崎享、『戦後史の正体 1945-2012』「戦後再発見」双書1)、創元社、PP.iv-v、2012年。
  6. ^ 孫崎享アメリカに潰された政治家たち」、小学館、2012年、P.16。
  7. ^ 孫崎享、カレル・ヴァン・ウォルフレン著『独立の思考』角川学芸出版、PP. 202-205。
  8. ^ 『自滅するアメリカ帝国 日本よ、独立せよ』、文春新書、PP.9, PP.59-63。
  9. a b 前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』、創元社、PP.1-11、PP.394-6。
  10. a b c チャルマーズ・ジョンソン『帝国アメリカと日本 武力依存の構図』、集英社、PP.25-26、PP.73-74、P.92。
  11. a b c 豊下 楢彦『安保条約の成立――吉田外交と天皇外交』、岩波新書、P.230。
  12. ^ 『鳩山由紀夫 孫崎享 植草一秀 「対米従属」という宿痾(しゅくあ)』飛鳥新社、PP.182-183、2013年。
  13. ^ Chalmers Johnson title = Blowback, Second Edition: The Costs and Consequences of American Empire, Owl Books, 2000, pp..xi, pp.68, pp.71-72. See the whole chapter 3: Stealth Imperialism.
  14. ^ Naomi Klein title = The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism, PICADOR, 2007.See the part 1 to 4.
  15. ^ チャルマーズ・ジョンソン『帝国アメリカと日本 武力依存の構図』所収『三つの冷戦』、集英社
  16. ^ オリバー・ストーン『オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史』DVD-BOX、角川書店、2013年、冷戦篇参照。
  17. ^ エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ監督『誰も知らない基地のこと』(Effendemfilm and Takae Films、イタリア、 紀伊國屋書店、2012年)
  18. ^ 孫崎享「戦後史の正体」創元社、PP.1-16。
  19. ^ William Blum title = ROGUE STATE: A Guide to the World's Only Superpower, Common Courage Press, 2005, pp.162-220.
  20. ^ エマニュエル・トッド『「帝国以後」と日本の選択』、藤原書店、PP.10-11。
  21. ^ 進藤栄一『アジア力の世紀――どう生き抜くのか』、岩波書店、2013年、PP.11-16。
  22. ^ 伊藤貫『自滅するアメリカ帝国 日本よ、独立せよ』、文春新書、P.9。
  23. ^ 鳩山由紀夫高野孟著 『民主党の原点―何のための政権交代だったのか』、花伝社、2012年、P.56。
  24. ^ ジョン・W・ダワー 『転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』 (NHK出版、P.247、2014年。
  25. ^ thirdworldtraveler. “U.S. Imperialism/Neocolonialism”. 2014年1月17日閲覧。
  26. ^ ジョン・W・ダワー 『転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』 (NHK出版、PP.240-243、2014年。
  27. ^ ジョン・W・ダワー 『転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』 (NHK出版、P.250、2014年。
  28. ^ ジョン・W・ダワー 『転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か』 (NHK出版、PP.245-246、2014年。
  29. ^ 孫崎享、『日本を疑うニュースの論点』角川学芸出版、、P.133、 2013年。
  30. ^ 孫崎享、『戦後史の正体 1945-2012』「戦後再発見」双書1)、創元社、PP.50-55、2012年。
  31. ^ Naomi Klein title =The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism, Picador, New York, 2007, P.71.
  32. ^ エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ監督『誰も知らない基地のこと』(Effendemfilm and Takae Films、イタリア、 紀伊國屋書店、2012年)
  33. ^ Chalmers Johnson title = Blowback, Second Edition: The Costs and Consequences of American Empire, Owl Books, 2000, P.194.
  34. ^ フランク・ドリル『テロリストは誰?』、ハーモニクス出版、2004年、PP.78-9。
  35. ^ ノロドム・シアヌーク著、友田錫訳、青山保訳『シアヌーク回想録―戦争…そして希望』、中央公論社、1980年、P.53。
  36. ^ ノロドム・シアヌーク著、友田錫訳、青山保訳『シアヌーク回想録―戦争…そして希望』、中央公論社、1980年、P.53。
  37. ^ フランク・ドリル『テロリストは誰?』、ハーモニクス出版、2004年、P.9。
  38. ^ フランク・ドリル『テロリストは誰?』、ハーモニクス出版、2004年、P.59。
  39. ^ チャルマーズ・ジョンソン『帝国アメリカと日本 武力依存の構図』、集英社、P.62。
  40. ^ 前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』、創元社、PP.48-49。
  41. ^ 豊下 楢彦『安保条約の成立――吉田外交と天皇外交』、岩波新書、P.47。
  42. ^ 前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』、創元社、P.20。
  43. ^ 前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』、創元社、P.17。
  44. ^ フランク・ドリル『テロリストは誰?』、ハーモニクス出版、2004年、P.60。
  45. ^ 世界ランキング統計局. “アメリカ軍の駐留人数が多い国ランキング(2011年)”. 2013年12月26日閲覧。
  46. ^ エンリコ・パレンティ、トーマス・ファツィ監督『誰も知らない基地のこと』(Effendemfilm and Takae Films、イタリア、 紀伊國屋書店、2012年)
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