日本の対外経済関係[編集]
日本の対外経済関係がアメリカ合衆国に対して過剰な依存をしているという認識は、日本政府が公開している対外経済統計と国際機関(国連、国際通貨基金、世界銀行など)が公開している世界の経済統計を参照する限りには事実ではなく誤認であると言うこともできる。
2008年の為替レートベースの世界のGDPは60兆6869億USドル[247]、アメリカ合衆国のGDPは14兆2646億USドル[248]で世界シェアは23.5%、日本のGDPは4兆9237億USドル[249]で世界シェアは8.1%、世界のGDPから日本のGDPを除いたGDPに対するアメリカ合衆国のGDPのシェアは25.5%である。
1990~2008年の間に日本の輸出に対するアメリカ合衆国のシェアは31.5%から17.6%に減少、中国のシェアは2.1%から16.0%に増大、輸入に対するアメリカ合衆国のシェアは22.3%から10.2%に減少、中国のシェアは5.1%から18.8%に増大した[250]。1990~2008年の間に日本の輸出に対する北米のシェアは33.8%から18.9%に減少、アジアのシェアは31.1%から49.3%に増大、輸入に対する北米のシェアは26.1%から11.9%に減少、アジアのシェアは28.7%から40.6%に増大した。 2008年の日本の輸出・輸入に対するアメリカ合衆国のシェアは、2008年の世界のGDPから日本のGDPを除いたアメリカ合衆国のGDPのシェアである25.5%より低いので、あくまでも世界の経済統計おける政府の長期対外債務残高のGDP比上では、日本の対外経済関係はアメリカ合衆国に対して過剰な依存はしていない[251]。
2013年5月に日本銀行国際局が発表した日本の『2012年末の本邦対外資産負債残高』によれば、2012年度末までの日本の対外資産296.3兆円にのぼり、負債残高は49.5兆円増加である[252]。また同報告によれば、日本対外純資産は、対外資産負債残高が発表されている主要国の中では中国の同年度の150.3兆円を超えて世界最高額である[253]。
いまや、米国覇権体制下でのアメリッポンの道も、新脱亜入欧論の道もありえない。代わりに見えてくるのは、欧米中心世界の終焉である。アジアNIESからBRICSを経て、G20からG0に到る大アジア力の世紀の到来である。そして総体としてのアジアの力が生む巨大な市場と豊富な人材が、一日経済圏の形をとって私たちの眼前に立ち現れている。それが、日本の貿易における、対米依存度の急激な縮小と、対中国、対アジア貿易依存度の急増に示される。日本の対外輸出における対米輸出比率は、70年代から80年代にかけて40%近く(86年38.5%)にまで達した。その後漸減し始め、2010年には13.3%に縮小し、減少はなおも続いている。逆に対中輸出は、70年代の1%以下から10年の21.2%へと、30年間で20倍以上も増加し、日本の対アジア輸出全体では54.1%にまで達していた。疑いもなく日本経済は、総体としてのアジアへの輸出依存度を高め、興隆するアジア経済との一体化の動きをさらに強めている[255]。— 進藤栄一『アジア力の世紀――どう生き抜くのか』
アメリカ合衆国の債券発行残高と日本の保有率[編集]
日本がアメリカ合衆国の債券を過剰に購入・保有しているという認識は、アメリカ合衆国政府機関が公開している債券保有者統計と国際機関(国連、国際通貨基金、世界銀行など)が公開している世界の経済統計を参照する限りには事実ではなく誤認であると言うこともできる。2008年6月30日現在のアメリカ合衆国の長期+短期の債券発行残高に対する日本の保有率12.5%は、2008年度の世界のGDPからアメリカ合衆国のGDPを除いたGDPに対する日本のGDPのシェアである10.6%と比較すると1.9%大きいが近似値である。2008年6月30日現在のアメリカ合衆国の長期+短期の債券発行残高に対する中国の保有率11.7%は、2008年度の世界のGDPからアメリカ合衆国のGDPを除いたGDPに対する中国のGDP[257]のシェアである9.5%と比較すると2.2%大きいが近似値である。2008年度の為替レートベースのGDPが世界で2位の日本や3位の中国は、自国の経済力以上にアメリカ合衆国の長期+短期の債券を過剰に保有しているのではなく、自国の経済力のシェアに応じて債権を保有していると見ることもできる。
2013年9月17日に、米国財務省は国際資本統計を発表して日本の米国債保有総額は2000年代以降の最高保有額の1兆1354億ドル(約112兆円)を記録した。それに対して、米国国債保有総額が依然世界首位の中国は1兆2773億ドルであった[258]。
アメリカ合衆国に経済的に収奪されるとの意見[編集]
対米従属に反対する人々(例えば鳩山由紀夫、孫崎享、植草一秀、前泊博盛など)の中には、日本とアメリカ合衆国との経済関係は、日本がアメリカ合衆国に一方的に搾取され収奪される関係であると認識している人が存在し、その具体的な事例として、アメリカ合衆国政府が日本政府に対して要求している、日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく、日本国政府への米国政府要望書(通称は年次改革要望書)で日本から搾取収奪するための政策を日本政府に強要し、その具体的な事例として、日本国民の郵便貯金をアメリカ合衆国の金融機関が搾取収奪する手段として郵政民営化をしようとしていると指摘し、反対している[259]。
先進国と先進国の経済関係においては、個々の国の全ての産業と主要な企業の国際競争力が、どちらか一国がもう一国と比較して一方的な強弱の関係ではなく、個々の国の個々の産業と主要な企業ごとに強弱・優劣があるので、どちらか一国がもう一国に対して一方的に収奪することは難しい。先進国と開発途上国の関係においては、冷戦時代の開発途上国の中にはアメリカ合衆国が傀儡政権を操って間接支配していた国があり、そのような国では一方的な収奪が行なわれていた[260]。
アメリカ合衆国の企業が日本の企業・事業を買収した事例[編集]
- 2003年 AIGが、東邦生命とセゾン生命を合併包括移転したGEエジソン生命を買収し、AIGエジソン生命へと改称した。また、旧千代田生命は、AIGスター生命保険として買収された[261]。
- 2011年プルデンシャル・ファイナンシャル・グループが、AIGとその傘下の旧千代田生命を買収し、ジブラルタ生命保険へ改称[262]。
日本の企業がアメリカ合衆国の企業・事業を買収した事例[編集]
「バブル景気」も参照
- 2010年 日本電産株式会社がEmerson Electric社のモーター&コントロール事業を買収[263]。
- 2012年 日本電産株式会社がThe Minster Machine Company、Avtron Industrial Automation,Inc.とKinetek Group Inc.を買収[264]。
- 2014年 サントリーホールディングスがビーム社を買収[265]。
米軍に対する意見[編集]
日本がアメリカ合衆国と軍事同盟を締結し、アメリカ軍に基地を提供し、 在日米軍の存在を容認していること、また思いやり予算で管理費用を負担し、その行動を“特例法”で国内法の適用対象外としていることは対米従属であるとの意見を持っている人々(例えば、対米従属批判の代表的論客である鳩山由紀夫、孫崎享、植草一秀、前泊博盛など)が多く存在する(琉球新報は社説で“対米卑屈”と喝破した[266])。
また日本とアメリカの軍事同盟締結のアメリカ合衆国側の事情としては、
- 日本が核攻撃を受けても、アメリカ自身が核攻撃される危険を犯してまで報復核攻撃はしないと、ヘンリー・キッシンジャーなどの複数の米国政府元要人や学者が述べている。
- 自由民主主義社会・資本主義国家の主導国として、冷戦に勝利することを追求していた。
- 冷戦に勝利するためには多種多様な分野で有力な同盟国ができるだけ多く必要だった。
- 日本は政治・軍事・経済・産業・科学・技術、その他の多種多様な分野で有力な同盟相手国だった。
- 日本はソ連領、中国領の東岸の列島が領土・領海であり、ソ連と中国を牽制する地政学上の要所である。
といったことがあった。
だが、もし日本、アメリカ合衆国、ロシア、中国、世界の情勢が変化し、日米両国の国民や議会の多数意見が、日米の軍事同盟は必要ないとの認識に変わるなら、日米の少なくともどちらか一方が日米安全保障条約の破棄を通告すれば、日米安全保障条約は1年後に解消される[267]。
フィリピンの米軍基地はフィリピン政府の都合で1992年に閉鎖になり、アイスランドの米軍基地はアメリカ合衆国政府の都合で2006年に閉鎖になったように、日本とアメリカ合衆国の軍事同盟が永久に続く根拠はない[268]。
外部リンク[編集]
- 吉田敏浩ルポルタージュ シリーズ「国家が情報隠蔽をするとき」(ASIAPRESS NETWORK)
- 「外交文書 対米関係の弱点が明確に」(信濃毎日新聞社説 2011年2月19日)
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