安倍の使う政治的怪物の正体とは?, 2014/11/13
レビュー対象商品: 日本に巣喰う4つの“怪物" (単行本)
カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は、氏の新著で独自の憲法論を披露されており、九条の戦力不保持規定と自衛隊/在日米軍が実際的に甚だしい齟齬を生み、この国の法体制を形骸化させてきた点を何より問題視しています。つまり、この問題の本質はやはり、砂川事件での統治行為論による判例法理から続く憲法停止状態、それが副次的にもたらす憲法と諸法規の乖離の常態化です。
この統治行為論が、日本的に、特殊な対米従属の法的装置なのです(統治行為論による全ての安保法制は憲法適用除外となる)。問題は、この点を放置したままの憲法崇拝が結果として対米隷属を固定化してきてしまった面は否定できません。さらに、米軍駐留の為に日本だけでなく、対米従属国のコスタリカやパナマでも憲法改正で戦力放棄が従米政権によって明記されています。この法的問題は、その本質である統治行為論を念頭に置けば、安倍一派の対米隷属の改憲論とは峻別できます。九条自体が問題ではなく、統治行為論が問題なのです。以下が氏のお言葉です。
カレル・ヴァン・ウォルフレン:進歩派の人々が用心深く全力で守ってきたこの憲法のように、これほど長期に渡って改正されなかったものは、近代史には他にない。ところが彼らのこうした姿勢は、うかつにも日本政治の中で実現しようと望んだものとは、まるで逆の状況を生み出すのに手を貸す結果となった。なぜなら憲法が、真剣に扱うべき基本的な法ではなく、崇拝の対象になってしまったからだ。第九条があるために、日本国憲法はさほど真剣に受け止められないのだ。つまり憲法が軍隊は決して維持される事はないと規定していながら、現実には世界で最も高価な軍事システムの一つ(四番目、もしくは五番目)を、そしてアジア最強の海軍を日本は維持し、結果として毎日、毎時間、そして毎分ごとにこれに違反し続けているからだ。憲法を、現実という取り消し難いものに合致させまいとすることで、日本の「進歩派」の人々は、半世紀にも渡って、日本の基本的な法律が破られ、真剣に受け止められない状態を維持してきたのだ。この法律が、憲法というよりは象徴性豊かな聖なる国の宝として機能している事は、日本の官僚には好都合であった。そして彼らはその多くの規定を無視し、明治時代の大日本帝国憲法に込められた法の精神に則って物事を処理してきたのである。(PP.223-224)
以上のテーゼは、実は砂川事件での挫折から今も持続している統治行為論がもたらしている憲法停止状態(戦後レジームの正体)とその弊害を氏なりに簡潔に析出したものであり、秀逸な論考です。では、氏は矢部さんの様な単なる安倍的な急進的改憲論に組するのでしょうか? 答えはいいえです。氏は、現状での九条改憲には反対です。それは、安倍による対米隷属の深化が、集団的自衛権行使容認の解釈改憲のように、九条なしには最後の法的論拠を喪失して歯止めが完全に効かなくなるからです。問題の在処は、九条自体ではなく、統治行為論という憲法無視の対米従属を強いる法的怪物です。勿論、憲法と実体の一致としての改憲は必須ですが、現状では九条に関しては慎重論が現実主義的です。以下がこの私の評論を根拠づける氏のお言葉です。
カレル・ヴァン・ウォルフレン:集団的自衛権を行使しての訓練が、実際に日本にとって何を意味するのかは、何年にも渡ってNATO加盟諸国がイランやアフガニスタンでのアメリカの冒険に予備軍を提供してきた事からも明らかだ。安倍首相が解釈の変更に止まらず、さらに踏み込んで、アメリカの要望に応えるためという理由で第九条を変更しようとし、アメリカの軍事的冒険に応えるなど、実に馬鹿げている。東アジアでの日本の安全保障に対する脅威が増しているからという理由で、第九条の変更を提唱する安倍首相のいい分にもやり方にも反対すると表明した有権者が、ほぼ60%に上ると朝日新聞の世論調査は伝えていた。そうなのだ。60%の人々に、我々が加わるに足る十分な理由がある。安倍首相は、偽の政治的怪物を使って、国民と自分自身を怖がらせている。そしてそれは中国を標的としたアメリカの封じ込め政策が生み出したものなのである。(PP.245-246)
これこそが、国際的な、だけでなく日本の真のリベラル派、民主派の最新の思想です。正に主権者国民、衆生を益する卓抜した論考です!安倍的改憲勢力にその左派護憲批判論で利用されている矢部さんは、安倍一派と同様の現状での九条に関する盲動的な急進的改憲論が、真の、そして最新の左派のものではないこと、また左派にとっても、国民にとっても危険であることを認識するべきだと改めて痛感しましたし、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の本書は、その思想、文体の一貫性、考察の深淵さなど最も秀逸です。
本書は日本全国民必読の書です。
この統治行為論が、日本的に、特殊な対米従属の法的装置なのです(統治行為論による全ての安保法制は憲法適用除外となる)。問題は、この点を放置したままの憲法崇拝が結果として対米隷属を固定化してきてしまった面は否定できません。さらに、米軍駐留の為に日本だけでなく、対米従属国のコスタリカやパナマでも憲法改正で戦力放棄が従米政権によって明記されています。この法的問題は、その本質である統治行為論を念頭に置けば、安倍一派の対米隷属の改憲論とは峻別できます。九条自体が問題ではなく、統治行為論が問題なのです。以下が氏のお言葉です。
カレル・ヴァン・ウォルフレン:進歩派の人々が用心深く全力で守ってきたこの憲法のように、これほど長期に渡って改正されなかったものは、近代史には他にない。ところが彼らのこうした姿勢は、うかつにも日本政治の中で実現しようと望んだものとは、まるで逆の状況を生み出すのに手を貸す結果となった。なぜなら憲法が、真剣に扱うべき基本的な法ではなく、崇拝の対象になってしまったからだ。第九条があるために、日本国憲法はさほど真剣に受け止められないのだ。つまり憲法が軍隊は決して維持される事はないと規定していながら、現実には世界で最も高価な軍事システムの一つ(四番目、もしくは五番目)を、そしてアジア最強の海軍を日本は維持し、結果として毎日、毎時間、そして毎分ごとにこれに違反し続けているからだ。憲法を、現実という取り消し難いものに合致させまいとすることで、日本の「進歩派」の人々は、半世紀にも渡って、日本の基本的な法律が破られ、真剣に受け止められない状態を維持してきたのだ。この法律が、憲法というよりは象徴性豊かな聖なる国の宝として機能している事は、日本の官僚には好都合であった。そして彼らはその多くの規定を無視し、明治時代の大日本帝国憲法に込められた法の精神に則って物事を処理してきたのである。(PP.223-224)
以上のテーゼは、実は砂川事件での挫折から今も持続している統治行為論がもたらしている憲法停止状態(戦後レジームの正体)とその弊害を氏なりに簡潔に析出したものであり、秀逸な論考です。では、氏は矢部さんの様な単なる安倍的な急進的改憲論に組するのでしょうか? 答えはいいえです。氏は、現状での九条改憲には反対です。それは、安倍による対米隷属の深化が、集団的自衛権行使容認の解釈改憲のように、九条なしには最後の法的論拠を喪失して歯止めが完全に効かなくなるからです。問題の在処は、九条自体ではなく、統治行為論という憲法無視の対米従属を強いる法的怪物です。勿論、憲法と実体の一致としての改憲は必須ですが、現状では九条に関しては慎重論が現実主義的です。以下がこの私の評論を根拠づける氏のお言葉です。
カレル・ヴァン・ウォルフレン:集団的自衛権を行使しての訓練が、実際に日本にとって何を意味するのかは、何年にも渡ってNATO加盟諸国がイランやアフガニスタンでのアメリカの冒険に予備軍を提供してきた事からも明らかだ。安倍首相が解釈の変更に止まらず、さらに踏み込んで、アメリカの要望に応えるためという理由で第九条を変更しようとし、アメリカの軍事的冒険に応えるなど、実に馬鹿げている。東アジアでの日本の安全保障に対する脅威が増しているからという理由で、第九条の変更を提唱する安倍首相のいい分にもやり方にも反対すると表明した有権者が、ほぼ60%に上ると朝日新聞の世論調査は伝えていた。そうなのだ。60%の人々に、我々が加わるに足る十分な理由がある。安倍首相は、偽の政治的怪物を使って、国民と自分自身を怖がらせている。そしてそれは中国を標的としたアメリカの封じ込め政策が生み出したものなのである。(PP.245-246)
これこそが、国際的な、だけでなく日本の真のリベラル派、民主派の最新の思想です。正に主権者国民、衆生を益する卓抜した論考です!安倍的改憲勢力にその左派護憲批判論で利用されている矢部さんは、安倍一派と同様の現状での九条に関する盲動的な急進的改憲論が、真の、そして最新の左派のものではないこと、また左派にとっても、国民にとっても危険であることを認識するべきだと改めて痛感しましたし、カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の本書は、その思想、文体の一貫性、考察の深淵さなど最も秀逸です。
本書は日本全国民必読の書です。
中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
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