東京新聞で連載された安倍政権による集団的自衛権行使問題に関する最も分かりやすい一冊!, 対米従属( Slavish
Obedience to the U.S. )批判論者の中西良太さんのレビューより
Amazonで購入(詳細)
レビュー対象商品: Q&Aまるわかり集団的自衛権 (単行本)
本書は、全14章と資料編で簡明に安倍政権による集団的自衛権(Right of Collective Self-Defense)行使の問題に最も分かりやすい詳細な説明がなされており、東京新聞と半田氏と旬報社さんの良心の結晶です。彼らは、主権者国民の立場に立っておられます。
半田さんの安倍政権の軍事安保体制の概括は最も一般に分かりやすいものです。集団的自衛権は、そもそも自衛ではなく、他国防衛、他衛である点が盲点です(集団的他衛権というのが適切)。そして、安倍の集団的自衛権行使は、安倍政権の個人的な米国防護の要請から、彼の誤った歴史認識(安保第5条で米国は日本を守るが、日本は米国を防護しない片務性なるもの)に基づいた対米従属の政策です。半田さんは、安倍軍事体制(日本版NSCと特定秘密保護法と集団的自衛権行使)を以下の様に見事に概括されています。
「たった四人で議論すれば首相の意向が通るのは当たり前です。密室でしかも議事録さえ残さない日本版NSCでこっそり自衛隊の海外派遣を決定し、決定された中身を特定秘密に指定すれば、国民の知る権利が奪われ、首相の思うがままの自衛隊の海外派遣が可能になります。」(4ページ)
私は、ここまで簡明なテーゼを拝見したことはありません。こんなに分かりやすく安倍軍事安保独裁政権の本質を表現した本はありません。
本書の最重要のポイントはこうです。日米間の軍事同盟では、米軍は日本人防護を既に1997年の日米ガイドラインで足手まといとなるので、日本政府が邦人輸送を依頼しましたが、明確に拒否しています。「日本国民は日本政府が、米国民は米国政府が退避させる責任がある。」(5ページ)と既に米軍は日本人を輸送どころか、一般的な防護義務を否定しています。偽保守の安倍による立法事実はございません。米軍の立場は、米国民の防護輸送だけです。
そこで、日本政府は朝鮮有事でも約在留邦人一万人は自衛艦で、4日以内に帰国させる独自の秘密輸送計画があります。(5−6ページ)
つまり、米軍は日米ガイドラインでも有事の邦人救出、防護、輸送を明確に拒否しており、日米同盟には片務性があり、安倍の言うような日本による米国防護の義務など逆に不平等です。日本を防護しないものを、日本が血を流して防護するのは属国の論理です。
本書は以上のように簡明に安倍政権の欺瞞性を打ち破っており、如何に国民に精確な情報が御用マスゴミから流されていないかが痛感されました。
追記:集団的自衛権は、1945年のチャプルテペック会議で、米州いずれか一国への武力行使を全加盟国への攻撃と見なし攻撃するという建前で確立され、大戦後は、冷戦期のソ連と米国が他国のへの侵略の正当化のレトリックとして集団的自衛権行使を主張してきたことは一般国民には知られていません。かのベトナム戦争は、米軍によるインドシナ半島衛星国化のために、トンキン湾事件を自作自演で仕掛けて、集団的自衛権行使として侵略したのです。ニカラグアでの民族政権転覆の軍事介入でも、当局の要請前に武力行使したにもかかわらず、集団的自衛権を主張し、ニカラグア判決で違法となっています。集団的自衛権は、対戦後の幾多の帝国主義的侵略行為の正当化のためのレトリックです。ただ感心したのは、1993年に米国が北朝鮮を軍事攻撃しようと画策した際、日本は集団的自衛権禁止を理由に1059項目に上る対米加担を拒否する英断をしていたことです。それが、対北朝鮮戦争を米国に断念させたのは全く正しい外交判断でした。それから、主権者国民は集団的自衛権の保有自体に誰も反対はしていないし、ただその現状での行使に問題があるということなのです。
本書は全日本国民必読の書です。