Saturday, July 12, 2014


フスの宗教改革は中世社会=カトリック教会社会において人間性を取り戻した!2014/7/11 対米従属批判論者の中西良太さんのレビューより
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本書において佐藤さんは、イエスを教会の頭としないで、ローマ法王=ローマ教皇を頭とするカトリック教会が、聖書及び原始キリスト教に背反することを論証されているだけにとどまらず、チェコのフスによる第一次宗教改革がやがて、チェコの民族意識を形成していく過程と、フスの宗教改革が当時のカトリック教会=中世社会(従って破門は社会からの排除、教皇と枢機卿が権威と教会を通じた社会の支配を行い、厳格な民族国家による区別や国民意識はまだ未発達、無自覚の時代)における人間性の回復過程を、原始キリスト教=真のプロテスタンティズム、つまり聖書を唯一の権威とし、教皇と枢機卿による世界各地の目に見える普遍的(カトリック的な)な教会を通じた搾取階級の社会支配の構造体制への偉大な革命的な、世界史的な革新運動として見事に再現しここに描写されている。ルターやカルバンによる後の宗教改革へと発展していくが、本書ではフスとイギリスのウィクリフまでが叙述される。

ただし、エンゲルスは、主にルターの宗教改革期のミュンツアーのドイツ農民戦争を19世紀の社会主義運動の契機としている点は本書で言及されていない。しかし、イエスが当時のローマ帝国における革命思想の担い手であり、今も不滅の世界社会主義運動の先祖であることを承認しているし、一連の宗教改革が、後のルターの世俗的な反動への変質だけでなく、後の社会主義運動へと肯定的に転化変転していったことは歴史の史実である。本書は、以上のことを全て論証している。

宗教改革の歴史を知る事は、現在と未来の社会史における社会運動の大文脈を読み解く上で必要不可欠である。真の革命家達は、無神論であっても宗教改革を研究し、自分たちのルーツや共通性を見いだしている。単に宗教論=形而上学=神学として本書に対しては、無益である。あくまで歴史書として読解されるべきである。前近代をしることが脱近代や近代そのものを理解する唯一の思索の道である。

本書において宗教と民族意識の誕生に関して、秀逸極まる佐藤さんの結論的な概括箇所を引用する。

「フス自身は、当然の事ながら、自らを近代的な民族としてのチェコ人とは考えていなかった。しかし、チェコ(ボヘミア)という出身地、チェコ語という言語と結びついた自己意識を持っていた。この自己意識は、フス戦争を通じて、チェコ人というエトニの輪郭を強力に形成した。さらにこの自己意識は、16世紀の宗教改革の結果、プロテスタンティズムと結びつくようになった。そして、このチェコ・エトニという意識が、近代になってチェコ人が国家を形成する民族意識を形作る母体になったのである。」(391ページ)

教義、教皇の権威を巡る世俗的闘争が、民族闘争へと転化した結果として、近代的民族意識が欧州で発展したのである。

本書は多くのキリスト教に関する誤認を解消してくれた。ローマ法王と教皇の表記の混合の歴史や、カトリックとプロテスタントの違いなどなど、とても勉強になる。他に哲学上の一般的な誤謬も佐藤さんが訂正してくれる。例えば唯名論が、実念論派がつけたレッテルであるという史実も本書で初めて知り得た。本書は、佐藤さんの力作であり、現在の日本国民のプロテスタンティズム理解への巨大な貢献である。文章は平易で誰にでもこの深淵な歴史的な認識過程をフォローできるようになっている。

本書は、全日本国民必読の書です。

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