昭和天皇の正体:昭和天皇裕仁の築いた戦後対米隷従体制, 2015/7/29
レビュー対象商品: 昭和天皇の戦後日本――〈憲法・安保体制〉にいたる道 (単行本(ソフトカバー))
私の戦後70年談話
戦後70周年である今年も、未だ日本は真に独立していません。誰がこのような歪な体制を構築したのでしょうか? その答えが本書にあります。未だに歴史認識問題を日本が引きずるのは、昭和天皇が戦争責任をとらずに、正式に世界に謝罪や反省をすることがなく、退位により戦後と一線を画し事なく、米軍に継続占領を依頼し、マッカーサーとダレスが了承し、国体と安保、九条と米軍が、米軍の恩恵という論理で併存してしまう事態となったためです。日中戦争の推進派の吉田茂は、後年捏造された彼のイメージの様に自主独立などではなく、さんざん安保交渉から逃避したあげく、最後は昭和天皇の対米従属路線に追随しました。
皇統の危機の事態の深刻さにおいて、立憲君主や専制君主として戦前戦後も振る舞った最高権力者の昭和天皇が、軍部クーデターを常に恐れ戦争反対しなかったために、第二次大戦で310万人の日本人が犠牲になりました。しかし、今も昔も戦後日本は政治的責任をとるべき政治的中枢が欠落している在日米軍に守られた官僚主義体制です。
昭和天皇の戦後外交は違憲と言えます。
以下は、タブーとなっている諸事実です。
昭和天皇の自発的な意向で行われた沖縄処分(本土と沖縄の構造的差別)も、重光に在日米軍撤退反対の指示を出して構築した従米安保体制(米占領軍による巧妙な日本統治の占領体制の継続)、米軍の日本占領に協力することで、東京裁判を免れ、忠臣東条に全責任を負わせ(米側が東条に証言を指示)、日本国憲法(天皇が保証する民主主義体制)では天皇制(国体)を温存させ、裕仁は広島や長崎原爆に就いては「やむをえない」と発言した。さらに、朝鮮戦争では米軍のリッジウェイに原爆使用を催促し、対中ソ包囲網や価値観外交を米側に提案した。すなわち、裕仁においては、違憲か否か、戦争か平和かよりも主権や沖縄よりも皇統の護持が全てでした。これが、彼の戦前、戦中、戦後を貫く一貫した論理です。
これらはすべて、敗戦国の元首としては類をみない歴史的事例であり、豊下さんにより、新旧資料を基にした実証的作業により論証されています。
以下は詳論です。
1、昭和天皇及び皇族は、日本国憲法の支持者か?
答:裕仁は占領軍の日本占領に協力する代償に、天皇制を日本国憲法に維持できたので、それだけでも連合軍に心から感謝した。安倍とは正反対である。
天皇はマッカーサーに対し、この度成立する憲法により民主的新日本建設の基礎が確立された旨の御認識を示され、憲法改正に際しての最高司令官の指導に感謝の意を示される。(p.vii)
2、昭和天皇は、東京裁判の支持者か?
答:裕仁は、東条非難をイギリス国王や米国紙等に於いて行い、全責任を東条に押し付け、東京裁判を免訴された。そして、連合軍に東京裁判について熱く謝意を表明した。安倍とは正反対である。
裕仁(マ元帥に対し):戦争裁判(東京裁判)に対して貴司令官が執られた態度に付此機会に謝意を表明したいと思います。(p.viii)
3、昭和天皇は、靖国神社参拝の支持者か?
答:裕仁は、1978年に元宮内大臣の松平慶民の息子永芳が、靖国神社の宮司として戦犯を、日本精神復興のために東京裁判を否定するという主旨で合祀した際に、これを厳しく非難し、以降天皇家は正しくも参拝を拒否し続けている。
裕仁:親の心子知らず。
また1987年には、裕仁はこう語っている。
裕仁:この年のこの日にもまた靖国のみやしろのことにうれひはふかし。
(p.ix)
4、昭和天皇は、米軍占領体制の継続となる安保体制(戦後対米隷属体制)の構築者か?
答:裕仁は、日本側から米軍の継続占領をオファーし、最終的にマ元帥もダレスもこの案に乗り、沖縄処分がなされ、当初の五分五分の論理での対等な協定の交渉は裕仁が占領継続を熱望した為に早々に頓挫し、米軍の占領がこともあろうに米軍の恩恵という形で交渉に入り、結果、全負担が日本に強いられることになり、今に至る。裕仁にとって、米軍継続占領は天皇制護持の手段だった。
ダレス特使は、(日米)二国間協定について、日本の要請に基づき米国軍隊は日本とその周辺に駐留するであろうと述べた。この説明に応えて、皇帝(昭和天皇)は全面的な同意を表明した。
(p.x)
5、昭和天皇は、軍国主義者か?それとも九条擁護か?
答:裕仁は、1975年においても軍国主義の復活を否定し、憲法でそれが禁じられているからだと安心している。皇族は、この点で正しい。
外国人特派員:日本が再び軍国主義の道を歩む可能性があるとお考えですか?
裕仁:いいえ。私はその可能性については、全く懸念していません。
それは憲法で禁じられているからです。
(p.243)
結論として、天皇家の保守の立場とは、反軍国主義、九条及び日本国憲法擁護、ポツダム宣言に基づく東京裁判承認、靖国合祀問題反対なのであり、右派を自称する安倍一派の立場とは対局にある。
最後に、著者は日本の対米独立の方図を示している。
それは、自主憲法や集団的自衛権、国防軍を設けても、政権交代でまず日米地位協定を破棄し、国体安保体制を支える統治行為論という判例法理、そしてそれに守られた密約体系の廃棄である。これらに、着手せずに対米独立は達成されず、米軍の日本占領は継続したままである。
本書は、全ての日本国民必読の書です!