護憲論議でリベラル派を分化する勿れ:9条よりも外国軍駐留(駐留も侵略に相当)禁止条項の加憲を!, 2014/10/23
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レビュー対象商品: 日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか (単行本(ソフトカバー))
まず本書の最重要の命題をご紹介します。それは、真の改憲に必須の条項です。又、その際米軍基地、九条二項、そして国連の敵国条項(この敵国条項である国連憲章第53条と107条により、日本は国際法上の最下層にあり、国連憲章における適用除外処置を受ける立場)をワンセットにして、その同時的な解決をなせる状況を創出していくために包括的に考察しなければなりません。ただの改憲本などではなく、原発問題も含めた体系的な批判論である点に留意が必要です。これまでの双書での論議の集大成であることも間違いありません。なお、改憲はフィリピン方式で、占領体制脱却は統一後のドイツ方式を参考にするべきだと提言されています。そしてこれらが、基地と原発問題永続の構造を根絶する事になるのです。正にタイトルの通りの実践的な結論を導いています。
矢部さん:「この改正憲法の施行後、外国の軍事基地、軍隊、施設は、国内のいかなる場所に於いても許可されない。」この条文を一行、憲法に書き込む事ができれば、それでゲームセット。この長い長い戦後の対米従属の物語と、米軍の支配層が一体化した安保村の歴史も、終わりを迎えることになるのです。同時にアメリカ国民自身が被害者であるアメリカの基地帝国化も、縮小の方向へ向かうでしょう。だからゴールの姿は見えている。あとは逆算して、どうすればそこにたどり着けるか、考えればいいだけなのです。(277ページ)
インタビューに依ると矢部さんは、孫崎さんに習い禁忌を全く無視して自由に記述されたそうです。
矢部さん:「孫崎享さんをみならって、ノーガードです。全部書きました。」
本書の原点は、矢部さんによるとカメラマンの須田慎太郎さんと沖縄巡りをした『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』という最初の本です。
本書の要諦は四つに総括できます。
1、東日本大震災を契機に日本が基地や原発問題を再考する様になった流れが今も続いており、沖縄に始まる日本の基地問題の研究は、原発問題へと不可分に繋がっているという研究上の発見。
矢部さん:「沖縄の米軍基地の問題は研究が蓄積されています。これをきっかけに、原発の問題にアプローチすると、謎が解けるのではないか。そう思ったのです。」
2、日本の暗黒社会の心臓部である日米合同委員会の決定は、日本国憲法に優先するという主権侵害の永続状態への批判。
矢部さん:「ここで決められたことが、日本国憲法を超えてしまうんです。在日米軍との委員会なので、外務省や防衛省の官僚が入っているのは分かるのですが、法務省、財務省、農林水産省などの官僚も入っています。米側の代表は、基本的に軍人です。」
3、砂川裁判における米国の司法介入が、米軍駐留違憲を断じた伊達判決を駐日大使のダグラス・マッカーサー2世が、藤山外相に命令し、跳躍上告という形で、安保は違憲審査の対象外とする最高裁判決で覆した事件による憲法停止状態の持続(これこそ真の戦後レジームの象徴)。
矢部さん:「日米地位協定の上に日米安保条約、サンフランシスコ講和条約があります。さらにその上に、国連憲章があります。国連憲章については、これまでほとんど考えられてきませんでした。そして、この仕組が最も露骨に表れるのが、原発の問題です。」
4、日米安保と日米原子力協定は、基地問題と原発問題をつなぐ。脱原発は、脱対米従属なしには達せられないことが詳細に分析されています。特に本書のパート1とパート2では、この二つの協定に関する詳論が展開されています。
矢部さん:「福井地裁により、大飯原発の運転差止判決が出ましたね。しかし、関西電力は何も動揺していません。それは、システムとして、判決が最高裁で覆るのだということを、みんな暗黙のうちに知っているからなんですね。日米原子力協定を見てみます。条文に『いかなる理由による(中略)協力の停止の後も、(中略)引き続き効力を有する』とあります。終了の後も効力を有する、本当に意味が分からない。徹底管理、ということです。」
以上の様な国際的に超巨大な帝国の構造(安保ムラも、原子力ムラも含む)に挑む国内の各中間団体は、基地問題と原発問題この二つだけででも団結できているのでしょうか?例えば、反原発連合は、「うちは原発一本でシングルイシューでいく」という誤りを是正するべきです。日米地位協定と日米原子力協定は、基地問題全体と原発問題全体だけでなく、日本の司法問題でもあり、人権/民生問題でもあり、他の社会問題の構造的矛盾にもなっているので、各中間団体は問題の形式的な領域を超越して、領域横断的に団結しなくては、この巨大な敵にはいつ迄も敵わないのは至極当然です。社会問題領域も単に形式的にシングルイシューでいくのではなく、今は体系知が必須なのです。前者は、実践においても抽象的で全体として一領域に過ぎず孤立したものです。
又、9条護憲は対米自立とは矛盾しないのは、今でもそれが個別的自衛権をも、集団的自衛権もそれ自体として否定していないという事であり、外国軍駐留(駐留も侵略に相当)禁止条項の加憲とも齟齬はなく、逆に戦後米軍の軍事行動への積極参加にも桎梏となってきたので、護憲=対米隷属という安倍の様な見方をする人たちもいますが、あくまで最低限、対米独立後に、日本は9条改正に着手するべきで今それに着手するのは孫崎さんや植草さんもご指摘の様に危険です。既刊の全ての双書でも9条否定論は何処にも展開されていません。そういう偽対米自立勢力にミスリードされない様に気をつけて下さい。筆者は、パート3で左派は押しつけ憲法論を否定すると断じているが、孫崎さんも、鳩山さんなどのリベラル派も押しつけの事実はどこでも否定されていないし、憲法が欽定か、民定か、押しつけか否かなどの議論は、今では一般において論争にはならぬまでに共通認識が形成されており、それで左派、リベラルを非難する混乱がここではみられ、逆に一般から隔絶した学界内の不毛な論議を知る参考になります。左派を批判している筆者自身もこう書いています。
矢部さん:人間宣言も日本国憲法も、書いたのは個人ではない。大枠を決めてこれでいけといったのがGHQ、その枠の中で自主性を発揮し、アレンジしたのが日本側。これでもう無益な論争に終止符を打つ事にしてはどうでしょうか? (190ページ)
日本のリベラル勢力は、護憲云々でさらに分化されてはいけない時です。
本書は全日本国民必読の書です。
矢部さん:「この改正憲法の施行後、外国の軍事基地、軍隊、施設は、国内のいかなる場所に於いても許可されない。」この条文を一行、憲法に書き込む事ができれば、それでゲームセット。この長い長い戦後の対米従属の物語と、米軍の支配層が一体化した安保村の歴史も、終わりを迎えることになるのです。同時にアメリカ国民自身が被害者であるアメリカの基地帝国化も、縮小の方向へ向かうでしょう。だからゴールの姿は見えている。あとは逆算して、どうすればそこにたどり着けるか、考えればいいだけなのです。(277ページ)
インタビューに依ると矢部さんは、孫崎さんに習い禁忌を全く無視して自由に記述されたそうです。
矢部さん:「孫崎享さんをみならって、ノーガードです。全部書きました。」
本書の原点は、矢部さんによるとカメラマンの須田慎太郎さんと沖縄巡りをした『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること』という最初の本です。
本書の要諦は四つに総括できます。
1、東日本大震災を契機に日本が基地や原発問題を再考する様になった流れが今も続いており、沖縄に始まる日本の基地問題の研究は、原発問題へと不可分に繋がっているという研究上の発見。
矢部さん:「沖縄の米軍基地の問題は研究が蓄積されています。これをきっかけに、原発の問題にアプローチすると、謎が解けるのではないか。そう思ったのです。」
2、日本の暗黒社会の心臓部である日米合同委員会の決定は、日本国憲法に優先するという主権侵害の永続状態への批判。
矢部さん:「ここで決められたことが、日本国憲法を超えてしまうんです。在日米軍との委員会なので、外務省や防衛省の官僚が入っているのは分かるのですが、法務省、財務省、農林水産省などの官僚も入っています。米側の代表は、基本的に軍人です。」
3、砂川裁判における米国の司法介入が、米軍駐留違憲を断じた伊達判決を駐日大使のダグラス・マッカーサー2世が、藤山外相に命令し、跳躍上告という形で、安保は違憲審査の対象外とする最高裁判決で覆した事件による憲法停止状態の持続(これこそ真の戦後レジームの象徴)。
矢部さん:「日米地位協定の上に日米安保条約、サンフランシスコ講和条約があります。さらにその上に、国連憲章があります。国連憲章については、これまでほとんど考えられてきませんでした。そして、この仕組が最も露骨に表れるのが、原発の問題です。」
4、日米安保と日米原子力協定は、基地問題と原発問題をつなぐ。脱原発は、脱対米従属なしには達せられないことが詳細に分析されています。特に本書のパート1とパート2では、この二つの協定に関する詳論が展開されています。
矢部さん:「福井地裁により、大飯原発の運転差止判決が出ましたね。しかし、関西電力は何も動揺していません。それは、システムとして、判決が最高裁で覆るのだということを、みんな暗黙のうちに知っているからなんですね。日米原子力協定を見てみます。条文に『いかなる理由による(中略)協力の停止の後も、(中略)引き続き効力を有する』とあります。終了の後も効力を有する、本当に意味が分からない。徹底管理、ということです。」
以上の様な国際的に超巨大な帝国の構造(安保ムラも、原子力ムラも含む)に挑む国内の各中間団体は、基地問題と原発問題この二つだけででも団結できているのでしょうか?例えば、反原発連合は、「うちは原発一本でシングルイシューでいく」という誤りを是正するべきです。日米地位協定と日米原子力協定は、基地問題全体と原発問題全体だけでなく、日本の司法問題でもあり、人権/民生問題でもあり、他の社会問題の構造的矛盾にもなっているので、各中間団体は問題の形式的な領域を超越して、領域横断的に団結しなくては、この巨大な敵にはいつ迄も敵わないのは至極当然です。社会問題領域も単に形式的にシングルイシューでいくのではなく、今は体系知が必須なのです。前者は、実践においても抽象的で全体として一領域に過ぎず孤立したものです。
又、9条護憲は対米自立とは矛盾しないのは、今でもそれが個別的自衛権をも、集団的自衛権もそれ自体として否定していないという事であり、外国軍駐留(駐留も侵略に相当)禁止条項の加憲とも齟齬はなく、逆に戦後米軍の軍事行動への積極参加にも桎梏となってきたので、護憲=対米隷属という安倍の様な見方をする人たちもいますが、あくまで最低限、対米独立後に、日本は9条改正に着手するべきで今それに着手するのは孫崎さんや植草さんもご指摘の様に危険です。既刊の全ての双書でも9条否定論は何処にも展開されていません。そういう偽対米自立勢力にミスリードされない様に気をつけて下さい。筆者は、パート3で左派は押しつけ憲法論を否定すると断じているが、孫崎さんも、鳩山さんなどのリベラル派も押しつけの事実はどこでも否定されていないし、憲法が欽定か、民定か、押しつけか否かなどの議論は、今では一般において論争にはならぬまでに共通認識が形成されており、それで左派、リベラルを非難する混乱がここではみられ、逆に一般から隔絶した学界内の不毛な論議を知る参考になります。左派を批判している筆者自身もこう書いています。
矢部さん:人間宣言も日本国憲法も、書いたのは個人ではない。大枠を決めてこれでいけといったのがGHQ、その枠の中で自主性を発揮し、アレンジしたのが日本側。これでもう無益な論争に終止符を打つ事にしてはどうでしょうか? (190ページ)
日本のリベラル勢力は、護憲云々でさらに分化されてはいけない時です。
本書は全日本国民必読の書です。
中西良太 / Ryota Nakanishi "Amazon Top #500 Reviewer 2014, 2013です。 憲法、消費税、TPP、基地問題、原発、労働問題、マスゴミと前近代的司法が日本の最重要問題です!"さんが書き込んだレビュー (万国の労働者階級団結せよ!民主主義にタブーなし!在日外国人への差別を止めよう!)
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