Friday, August 8, 2014


 真実は最強のプロパガンダ!米国例外論の否定と日米民主勢力の連帯による対米独立を!対米従属 Slavish Obedience to the U.S. 批判論者の中西良太さんのレビューより
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2014/8/6
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本書は、2013年8月(4-15日)にオリバー・ストーン監督が、95年以降カズニック教授の主催するアメリカン大学の8月好例の、アメリカの学生達に正しい歴史認識と記憶を醸成する為の京都、広島、長崎への研修旅行に同行の形で行った各地(広島、長崎、東京、沖縄)一連の講演/対談録の集成です。テレビ未放映の内容ばかりです。

読んでいく中で、乗松さんの日本のメディアの同監督らの発言の扱い方に関する洞察が最も秀逸です。実際、オリバー・ストーン監督らの作品のタイトルは、日本のNHKによって、監督の本来の意図した「誰も語らない」ではなく、「もう一つの」というように、あたかも監督らのフィクションや仮説であるかのような擬装が作られていることにもそのイデオロギー的傾向は顕著であり、 対米独立に日本の御用メディア16社体制がついに目覚めたという訳ではないのです。(ただし琉球新報、東京新聞などのまともなメディアは例外)

乗松さんが、実に本書で(84-85ページ)厳格に分析されております様に、日本の大手メディアは、監督達の原爆投下批判、第二次大戦時の米国批判の部分のみをことさらクローズアップしたのです。同監督達の、安倍政権が主導する日本の戦争犯罪美化への批判、反中、反韓のレイシズム批判をまともに報道していません。

ここで、ストーン監督達が、語られている内容は先のドキュメンタリーや著書と重複しますが、幾つか見落としがちな要点があり、以下に纏めます。

1)米国側にとっては、日本はパートナーではなく、中国封じ込め政策(アジア基軸政策)の上で太平洋上に環状に広がった同盟国群の一つという位置づけに過ぎないということ。

2)日本の敗戦の主因は、ソ連の侵攻によるソ連を通じた日本の終戦工作と本土防衛計画の最後的失敗であり、満州国崩壊による満州事変の最終的な敗北であり、既に全土が空襲で灰燼と化していたので、原爆が決定打ではなかった。報道も主としてソ連侵攻を報じていた。そして、原爆投下が日本を敗北させたという神話が、核保有、核戦略の正当化の核神話の源泉となったし、さらに、これは、帝国主義を肯定する米国例外論の神話の原点であるということ。核肯定論を否定する為の正しい歴史認識が、必要との自覚が求められる。ナチを倒したのも、日本を倒したのも実は主力はソ連。

3)米国例外論とは、カズニック教授曰く:米国史の根幹には米国例外主義というものがあり、これは米国を他の国とは根本的に異なる存在と見なし、他国は強欲、権力欲、領土欲に動機づけられる一方、米国の行動は善意に基づき利他的な動機からきており、世界に自由と民主主義を広めていくのだという神話です。(19ページ)これとの国際的な戦いが、真実による歴史認識を武器にしたカズニック教授らが主導する民主主義を取り戻す戦いです。

4)ストーン監督は、日本の戦後の総理で鳩山政権だけが対米自立であると分析されています。

5)米国内の帝国主義勢力は二つあり、一つはネオコン派であり、もう一つは、ベトナム戦争を主導した冷戦リベラル派であると、監督は指摘しています。

6)現在米国の帝国は、リリーパッドと言われる約1000以上の軍事基地のネットワークを全世界に張り巡らせ、侵略の拠点とする新たな軍事戦略を基礎としている。

7)日本の原発=核利用政策は、1953年のアイゼンハワーの原子力平和利用宣言(実際は、核兵器を使用可能にするためのものという記述がある)を受けて、CIA、USIAがその工作員である読売新聞の正力松太郎を操作して日本で国民を洗脳したことに始まる。

8)ウクライナの政変は、全米民主主義基金という対米自立政権転覆工作の現地要員を支援、育成する1983年レーガン政権の産物を通して、ネオコンのケイガン欧州/ユーラシア担当国務次官補がスボボダのようなネオナチ勢力を操作して、前政権を転覆したのである。

私は、乗松さんの言葉が一番印象に残り、尚かつ最重要だと思いました。それは、核の傘である日米安保に拘泥しているのに、一方でそれに反対せずに九条擁護や反核を喧伝する本土の矛盾を指摘した以下のお言葉です。

「日本政府は、米軍基地と核の傘の幻想の下に、安全保障策をとっています。それに対して日本の人たちは7、8割が安保を認めているというデータがあります。沖縄は1%以下です。安保を認めながら反核とか9条を守れとか、どうして言えるのですか。日米が一体と考えるなら、日本は北朝鮮やイランの核開発を責めるのではなく、米国を責めなくてはいけない。大核保有国と同盟を組んでいる自分たちを責めないといけない。日米安保をやめよう、米国の軍事覇権に引きずられないような新しい日米関係を築こうという形で運動しないといけない。安保を温存しておいて、その中で唯一の被爆国とか反核とか言っても全く説得力がないと思います。」(28-29ページ)

では、ストーン監督たち米国の民主派は、なぜ国際的に米国の帝国主義に反対し、米国の民主主義を復興させようとして、日本にも対米自立を促しているのか?そのスタンスは、以下の言に最もよく現れています。

「以前、映画監督のマイケル・ムーアが、『私は自分の国が今のような国になってしまったことに嫌悪感を覚える。しかし私はそのまま放置していることも拒否する。』という主旨の発言をしていました。私たちは米国内で戦っているのです。外国に来て米国を批判しているのではありません。このような自国批判はいつも自国の中でやっており、私たちは批判家として知られています。我々は自分たちの国を愛しており、もっと良くなって欲しいと願っているのです。」(55ページ)

つまり、彼らの立場からすれば、米国の民主主義を取り戻す為の国際的な戦いの一環が、日本の対米帝国主義自立を促すことなのです。

さらに、カズニック教授の以下の言は、日本の対米独立のイデオロギー闘争でもそのまま有効です。真実は最高のプロパガンダであり、嘘による代償は、真実のそれよりも甚大であるという普遍的真理の教示です。歴史修正主義は、一言で言うと歴史認識に於ける虚偽、欺瞞、詐欺です。

「私たちの武器は歴史です。理解です。知識です。そして真実なのです。そこで問われるのは、大砲や爆撃機や潜水艦や監視技術に対し、歴史を直視し、真実を求めることの強みとは何かということです。」(98ページ)

本書は、原文でも出版して頂きたい素晴らしい内容です。ストーン監督は、彼自身は反米などではなく、米国を愛しているからこそ誤りを正さねばならないとおっしゃっていました。同感です!
例えば、先の2014年1月7日の29人の知識人達が共同声明『世界の識者と文化人による、沖縄の海兵隊基地建設にむけての合意への非難声明』も、オリバー監督のイニシアティブがなければ実現しなかった程、日本と沖縄の対米独立にとって必要不可欠な国際支援です。我々は、反米ではなく、米国の民主派の協力をも得て、日本を、沖縄を愛しているからこそ、政府の誤りである対米隷属を正さねばならないのです。

私たちは沖縄県内の新基地建設に反対し、平和と尊厳、人権と環境保護のためにたたかう沖縄の人々を支 持します。 私たち署名者一同は、2013年末に安倍晋三首相と仲井真弘多沖縄県知事の間でかわされた、人間と環境を犠牲にして沖縄の軍事植民地状態を深化し拡大させるための取り決めに反対します。安倍首相は経済振興をエサに、軍港をともなう大型の海兵隊航空基地を作るために沖縄北東部の辺野古沿岸を埋め立てる承認を仲井真知事から引き出しました。
『世界の識者と文化人による、沖縄の海兵隊基地建設にむけての合意への非難声明』より

日本人は、レイシズムに走らず、冷静になり、よく自ら考察してこうした素敵な国際協力に対して感謝するべきです。

Thank you! Mr. Oliver Stone!

本書は、全日本国民、とりわけ同講演を拝聴する機会のなかった本土の読者必読の書です。

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