Monday, June 9, 2014


対米従属と新自由主義の亡国政策批判:2008年の第二次世界大恐慌は新自由主義が誤謬である事を証明した2014/4/12
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資本主義社会は、今日までに五種類に歴史的に分類できる。資本主義はイタリアで始まった其の最初期段階から、18世紀の産業革命を経て、勃興期に入り、直接的植民地統治による旧帝国主義時代において二つの世界大戦をもたらした。そして、ソ連型の国家資本主義(ソ連型社会主義)だけでなく、ニューディール政策による1930年代の第一次世界大恐慌と第二次世界大戦の終結から、修正資本主義といわれるケインズ主義による戦後資本主義が誕生した。ただし、戦後すぐに冷戦に入るとギリシャ内戦とイランのモサデク政権転覆への米帝の介入は、英帝覇権の終焉と米帝への世界権力の転換であり、多国籍企業中心主義の新自由主義(新帝国主義)を世界へ蔓延させる端緒となった。それは、やがて軍事ケインズ主義へと変形し、金融資本主義とも言われる90年代以降の段階に入ってついに、2008年の第二次世界大恐慌をもたらしたことが本書から十二分に理解できる。

本書の要諦を以下に纏める。

1)新自由主義は、其の主体を多国籍企業とするので、常に何処の国と地域間の自由貿易協定をも利用できる点は最大の盲点である。

2)新自由主義は、1%の資本家の為の独裁であり、強権体制を必須とする。そして、福祉や民主の観点からすれば99%の労働者に対する無政府状態、小さいどころか無きに等しい政府を意味する反民主主義である。このような政治的不平等(独裁と無政府状態の並立)を市場原理主義と喧伝するのは虚偽である。人権概念の市場概念への引き下げと同一視は、反民主である。また、不良債権買い取りプログラムに代表される癒着資本主義は高度に不公正な政府による介入であり、完全なアナーキーズムとしての市場原理主義ではない。

3)新自由主義下では、全体としての労働者の全産業ベースの現金給与総額統計は停滞と減少を特色とする。この政策下での、経済的発展は、1%への富の集中による全体の引き上げという幻想である。

4)新自由主義の四大弊害とは、超格差と貧困集中、金融危機、財政危機である。

5)新自由主義は、反共レトリックに依って冷戦期に伝播されたが、基本的にケインズ主義(第一次世界大恐慌は、放任資本主義の帰結として政府主導の総需要管理による福祉国家、大きな労働組合に基づく資本主義政策)の否定という主要面をもつ。其の歴史的な起源は、1947年にハイエクやフリードマンによって設立されたモンペルラン協会である。新自由主義とは労働組合の解体、福祉国家の解体である。例えば、中曽根以来の日本の新自由主義政権下で今日の企業内組合組織率ですら全体で17%にしか満たない。

6)新自由主義がケインズ主義に対して支配的になった契機は、1970年代のスタグフレーションによる戦後資本主義体制とケインズ経済学の失墜である。

7)米帝が世界中に新自由主義を押し付ける窓口はIMFと世界銀行である。米帝は、この二つの組織に於いて拒否権を有し、世界銀行の総裁は米大統領の指名制である。IMF総裁は、欧州人が就くのが慣行であるが、IMFと世界銀行の経済学スタッフの最大多数はアメリカの新自由主義経済学者たちである。シカゴ学派の人間が主である。そして、このような公平性にそもそも欠いている組織がFTAやTPPでのISD訴訟の仲裁機関なのである。

8)知的独占及び特許ビジネスは、新自由主義下で顕著な傾向であるが、これは、知的財産保護強化というレトリックでなされる。知的独占は、創作活動や知識の伝播を阻害する。例えば、特許トロールは深刻であり、彼らは研究開発を一切行わず、特許だけを購入し、それを悪用して他社の知的財産権侵害をISD条項などで訴え、利益を得ている。このような、非生産的で、産業政策ではなく、市場政策に寄生する投機分子による金融資本主義体制の独占と運用が1%への富の集中と産業全体の生産活動と労働者を衰退させるのである。

9) 戦後資本主義(一億総中流のスローガンに象徴される)がハイ・ロード(技術革新による高品質製品の大量生産と低価格化)であり、新自由主義=機関投資家資本主義=カジノ資本主義=金融資本主義(金融は、産業を助けるものという本義の喪失、金持ち減税、ストック・オプション、投機の放任主義、株価上昇至上主義)がロー・ロードとして低賃金による競争を原理としていること、そして其の為の福祉、労働制度解体を規制撤廃というレトリックで覆い隠しているのである。規制撤廃なるものは労働者の保護の解体であり、誤認した労働者がレジームと共に肩を並べて喜ぶべき類いのものではない。

10)昨今の米国の経済成長の仮象、見せかけの経済的繁栄(偽りの好景気)は、ITバブル、住宅バブルと投機と負債によるもので、実態経済に則した産業政策によるものではなく、負債に依存する成長である。しかも、労働生産に依る価値の創出とは異なり、株価や住宅価格の上昇は新たな富の創出ではなく、非生産的である。富の貧者への再分配自体を否定する新自由主義政権が成功したのは唯一バブルによる需要創出、つまりバブルに依存する1%への富の集中である。

11)1990年代に日本経済は、新自由主義の賃金抑制型経済へ移行した。特に1997年から1998年の金融危機により、賃金停滞へと転換した事が顕著である。この趨勢は2014年現在も変わっていず、アメリカ以上の超格差社会の到来と言える。また、このいわゆる平成大不況は、金融危機が頻発する最も落ち込みの振幅の激しい新自由主義型の経済状態の産物であり、デフレ=経済停滞は誤りである。なぜならば、経済状態は常に程度は異なれデフレかインフレ寄りなのだし、デフレのもとでも経済成長した事例があり、短絡的判断は危険である。1980年代以降の新自由主義政権の下で、153カ国が金融危機の頻発を経験している。

12)新自由主義の典型的な詭弁にトリクル・ダウンがある。しかし、新自由主義下では、成長率は概して低く、実質賃金や家計の中位の水準は米国ですら40年前の水準を推移している。賃金低下=非正規化は、もちろん消費減少である。この現象自体が反駁不能な不景気の表徴である。また1%の支出は主として投機(マネーゲーム)に集中するので、社会的な資源の浪費が甚だしい。従って、1%に富が集中しマネーゲームが興隆するほど、社会全体の格差は悪化する構図である。それらは、設備投資や社会的な富の再分配に廻すべきものである。

13)本書での、原発事故は保険の対象にならないという指摘も秀逸である。

14)ハイエクは、数値、統計化できぬ知識の重要性の欠如としての不安定性を説いて社会主義を否定したが、新自由主義自体こそが正にその数値、統計化できぬ知識を捨象している最悪の不安定経済なのである。

15)新自由主義の盲点は、物価安定一点張りのために金融不安定性の拡大を抑止できない点にもある。金融緩和で、経済を正常化した先例は未だないのである。

16)新自由主義における一金融機関のリスク分散は、金融システム全体のリスク分散には繋がらない。

17)バブル崩壊後に必ず来る金融危機対策の欠如や、投機マネーの放任の否定、規制こそが今不可欠である。

18)米国の計上赤字収支は4割以上がアジア太平洋地域からのものであり、外国政府の貸し付けでも4割以上がアジア太平洋地域からのものである。これが、米帝にTPPを保護政策として必要とさせた。ここに、グローバル・インバランスがある。例えば、関税面では、米帝は日本に自動車関税撤廃を強いるが、自身は保護主義を採る。また、基軸通貨ドルの特権を有する米帝は外貨保有の必要性を免れているために、外国への貸し付けはほとんどない。(外貨購入は、基軸通貨ドルの米国債という形態での購入が主である。中国と日本はこうして米帝の経常収支赤字を補っている。しかし、円高で多額の為替差損を被っているのは我が国日本である。米帝の尻拭いをいつまで続けるのか?)

19)金持ち減税と政府支出削減はワン・セットで、形式上の財政再建の状態をもたらすが、社会福祉、生活保護を減少させ、99%の生存権を脅かすことで無意味に成り立つ。これは、雇用も、消費も、生産も、人口も減少させ、正に最悪の経済政策である。

20)日本の高齢化は、80年代には始まっており、これと90年代以降の経済停滞とは別問題である。御用メディアはこの二つを混同する。

21)経済危機といえどもすべての人が同じように苦しんでいるわけではないという指摘も精確である。我々は、新自由主義の国賊政権を打倒し、金持ち減税政策から、一億総中流の支出拡大政策へ転換すべき時に来ている。

22)官製ワーキング・プアー(官製非正規雇用)は、今の日本でも拡大中である。従来のホワイト業務のブルー化が深刻である。

23)一部のスーパー・リッチの繁栄した姿を、アメリカ経済全体の繁栄と勘違いした人達は、主として1998年金融危機以降、日本を新自由主義へ転換させた。彼らは、金持ち減税が、強欲な資本家個人を潤すのみで、経済全体への波及効果はないことを理解するべきである。

 本書は、新自由主義の研究書として第一級の良書である。著者は、新自由主義の変動相場制の虚構も暴露している。「実際には自由な金融市場の下で、投機とバブルが市場を攪乱してきたのと同じく、自由な為替市場においても投機が発生している。変動の原因が投機によるものならば、其の国の通貨が経済の実勢にあわせて調整されたという事にはならないであろう。」(P.137)

 本書は全日本国民必読の書です。
対米従属批判論者の中西良太さんのアマゾンレビューより    

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