Wednesday, June 18, 2014


修羅場:継続的に闘争が起きている場所を指す2014/6/11
Amazon.co.jpで購入(詳細)  対米従属批判論者 中西良太さんのレビューより
本書では、全11章ある修羅場を切り抜けた11人の人物評を通して各人の教訓が総括されていく。

第1章では、目的のために手段を選ばぬ君主論を説いたマキアベリから、マルキストではなくプロテスタントの中道左派である佐藤さんは専門知識あるものの助言に絞り込み、即断せず自分で考え決断したら貫徹することを導きだす。

第2章では、イエスである。イエスがユダヤ教徒で、キリスト教はパウロの創作である点はまだ多くの人々には知られていないが正しい歴史観である。ここでは、自分が他者に何を与えることができるかを考える必要性を説いている。

第3章は、ドストエフスキーである。彼は革命の挫折者で、皇帝への帰依者であるが、ソ連のようにそこで切り捨てずに革命精神を温存し続けた点が指摘される。ここでは、作家が自身の持つ危険思想についてあたかも敵対しそうであるかの如く話す傾向が説かれる。

第4章では、ヒトラーである。彼の思想は生存闘争至上主義で、そのためには何をしても許されるというものだった。また、ヒトラーが反自由貿易主義者である点も彼の偏狭な民族主義から理解できるが、本当の保守右派はそういうものだろう。安倍との違いも明確である。

第5章は、麻生のナチ発言の根源である、ワイマール憲法形骸化の矛盾立法の手口を編み出した政治公法学者ケルロイターである。ここでは、憲法改正せずともそれを形骸化する立法で、実質的な改憲、見えない新憲法体制を構築することが可能であることが指摘される。

第6章では、スノーデンであるが、ここでは、ハッカーのアナーキズムが問題視される。そして、彼が諜報機関の掟破りをした点が修羅場における作法を誤ったと見受けられる。佐藤さんは諜報の世界の観点から彼を手放しに評価していないし、プーチンと同意見である。

第7章は、ロシア文学者の内村剛介である。ここでは、スターリン獄を生き延びた彼から、絶対的な価値を堅持する人はどんな困難でも切り抜けられることが分かる。ただ、ボリシェビズムが直ちにニヒリズムとする説は説得力がない。

第8章では、宇野弘蔵が扱われる。戦前のマルキストたちが、日本では講座派と労農派に二分されるのはここで初めて知った。彼が治安維持法で検察に捕まった件からも、今の検察ファシズムの手口が当時と同一であることが分かった。ここでは、佐藤さんは、修羅場に対処するには優れた知性と豊かな心情を持つインテリになることが必要と説く。

第9章では、反ナチの神学者ボンヘッファーである。ここでは、ネット言語文化や短文思考が、ポストモダニズム的に思考、リテラシーの低下を招くことが危惧される。佐藤さんのお言葉で印象に特に残ったのは以下の部分である。「個人が個として書き言葉に向かい合い、自立的に思考する」という、反時代的なアプローチが、修羅場の技法として、もっとも効果的と筆者は考える。(本書、P.150)ここでは、佐藤さんはイエス的な言行一致だけでなく、お互いに正しい言葉使いと行為をすることによる信頼と友情の醸成を説く。

第10章では、会社員の安藤美冬である。ここでは、トルストイ的に、ただ仕事などの道を邁進するだけでなく、休みをとり反省することの大切さを説く。

第11章では、作家のラングドンである。孫崎さんも引用される言葉「地獄の最も暗きところは、倫理の危機にあっても中立を標榜するものたちのために用意されている」(本書、P.191)から、佐藤さんは自分の価値観をあくまで追求し、不作為が修羅場で悪になることを指摘する。

本書から、修羅場の作法の達人たちは「時」を見極める達人たちでもあることが分かる。

本書は、修羅場を切り抜けるこつを得る上でお役立ちの本です。

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